2.魔王として何をしましょう─3
考えろ、俺。
この国の歴史書とかを学ぶ手間は─記憶の継承で既に知っているから─掛からない。外見は色々だが、とりあえず言葉は通じる。変態はいるが、目下のところ俺が一番強い…らしい。
勇者を警戒しながら、国を纏めるシミュレーション物だな。オーケー、オーケー。
とりあえず、自分の力を知ろう。
「魔王様、戻りました。」
俺が考えを纏めたタイミングを見計らってか、ダミアンが再登場する。
「よし、ダミアン。身体を動かしたい。付き合え。」
「は、はいぃぃぃ~っ。」
視線で合図しながら足を踏み出した俺だが、ダミアンは入り口を入ったところで立ち止まってしまった。
おかしな声を出していたが…、まさかな。
ジロリと睨むと、小刻みに震えていた身体を直立体勢に直す。
「か、畏まりましたっ。」
「お前、おかしな事を考えてるんじゃないよな?」
「とんでもございませんっ。」
歩み寄りつつ訝しんで見上げるが、とりあえずは問題ないようだ。
「約束、覚えてるよな。」
「はいっ、身体に刻んでおりますっ。」
改めて確認するが、ダミアンの返答は変わらない。
ってか、刻んで?おかしな言い回しをする奴だ。
「インゴフ。軽く模擬戦が出来る場所は、地下だったな。」
「そうじゃな。あそこは、強固な結界を、二重に掛けてあるからの。」
記憶の中から、魔王城の見取図を確認する。
身体を動かし、記憶との違いや己の力を、早めに把握しなければならないのだ。
「ダミアン、ついてこい。」
「はっ。」
俺の言葉に、意味を理解する間もなく、返答をするダミアン。
そして俺達は、地下の鍛練場に向かう。
◆ ◆ ◆
ここでは見慣れた黒い扉を開けると、運動場くらいの空間が広がっていた。
城の地下の筈だが暗くもなく、電灯よりは少し弱い、光る球体に照らし出されている。
記憶によると、照明という魔法だな。前に見た、インゴフの点灯が松明的な明るさだったのに対し、この魔法は固定式だ。
つまりは本当に照明として、設置して使う魔法設備だろう。
「自動照明か?便利だな。」
周囲を見回し、他に誰もいない事を確認する。
「はい。ここは魔法士の管轄ですので、立ち入る者の魔力に反応して照明が発動するようになっております。」
答える声に振り向くと、ダミアンは当たり前のように、俺の斜め左後ろに立っていた。
これは俺が右利きである事を考慮しての、その立ち位置なのだろうか。
ちなみに、インゴフはいない。
あれはあまり摩核─認証の儀を行う部屋─から出ない、いわゆる引きこもりだ。