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召喚魔王の俺  作者: まひる
第3章
168/248

5.魔王は不死身ではありません─2


 そんな少し強引な話し合い──あれを話し合いと呼ぶなら──の後、アルフォシーナと俺は闇夜に紛れて人族の拠点へと向かっている。

 基本的に人族は暗視能力が高くないので、空一面に常に分厚い雲が掛かっているこの辺りでは不利な筈だ。

 広範囲を照らすような照明器具なんて存在しないこの世界では、灯りは魔法か松明(たいまつ)などの炎しかない。それ(ゆえ)に、夜は魔族の時間とも言えた。


「なぁ、アルフォシーナ。」

「ん。魔王様、地面がキラキラ。」

 淡々と答えるアルフォシーナ。

 これだけ聞くと、俺達の会話がおかしなものと聞こえるかもしれない。だが、これは事実なのだ。


 現在地は人族の拠点を百メートル程前にした、森ともいえる木々の集合体の上空である。

 そして眼下には松明(たいまつ)を数ヵ所灯し、見回りの者も何人か歩いている一見すると普通の陣地だ。

 だがしかし何故、周囲数十メートルだけが炎に照らされて水面みたいに輝いているのか。


「魔王様。変な感じ、する。」

「え……っ!」

 ちょうどその不可思議な一帯の上空に差し掛かった時、突然アルフォシーナの身体が傾いた。

 彼女は腰の小さな翼で飛んでいたのだが、急に脱力したようにガクッと降下する。

 慌ててその腕を掴んで落下を(まぬが)れたものの、俺の闇魔力の翼からも少しずつ力が抜けていく感じがした。

 このままでは危険と判断し、俺はアルフォシーナを抱き留めたまま後退する事に決める。

 落下は拙いし、何より彼女をこのままにしておく訳にもいかなかったからだ。


「大丈夫か、アルフォシーナ。」

 後退して近くの森に身を潜めた俺は、グッタリとしたアルフォシーナに声を掛ける。

「……ん。もう、大丈夫。」

 木の根元に横たわらせていた彼女は、そう答えながら気だるげに身を起こした。

 いやいや、全然大丈夫な感じしないから。

「もう少し横になってろ。それより、どんな異常を感じたんだ?」

 アルフォシーナの肩を押して制し、彼女の感じた違和感を探る。


「分かった。魔王様は平気。あたしは力が入らない。」

 困惑気味に告げる彼女は、不思議そうに首を(かし)げながら両手を開閉させていた。

 脱力感を感じるのか。確かに俺も、あの領域では魔力を奪われる感覚があった。

 やはりあのキラキラ、普通じゃない。

「ほら。」

 いざという時の為に持ってきていた野戦糧食(レーション)用の魔石を手渡し、アルフォシーナに回復を促した。

 とにかく、これ以上彼女をこの先に進められないな。

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