5.魔王は不死身ではありません─1
「宰相が何を言っているのか分からない。」
「同じく俺も分からないな。だが、こういう時は少し頭を冷やさせた方が良い。」
小首を傾げるアルフォシーナを見て、俺も首を竦めて見せた。
結論的に、これは帰ったら面倒なパターンだって事だけは分かる。
ともかく今は情報共有とばかりに、ファックス送信気分で文字を送り届ける事にした。──闇魔力、パない。
「魔王様、何したの?」
「ん?ダミアンに文字で情報を送ったのさ。」
「文字?」
「あ~……、こんな風に。」
不思議そうなアルフォシーナに、実際に空中に闇魔力で文字を映し出して見せた。
こっちにない思考だからか、酷く驚いた顔をしている。
あまり表情を見せないアルフォシーナだからか、それはとても可愛いと思った。
「驚いてくれてありがとな。何だかやったかいがある。それにしても、この粉末を避ける方法がないんだよなぁ。」
何となく嬉しくなった俺の表情が自然と柔らかくなる。
しかしながら確実な回避方法は今のところない。
「いっそのこと、俺が突っ込んでみるか。」
「ダメ。魔王様を守るのがあたし。」
即座にダメ出しを受けた。
まぁ、魔王といっても不死身ではないんだけど。
「けど他の魔族が戦闘に挑んだところで、結果は変わらないだろ?」
「それでもダメ。」
「ん~……。それなら、人族の武器を奪って来ればよいんじゃね?」
引かないアルフォシーナに、俺は妥協案をあげた。
四魔将軍でなくとも、魔王が存在しなくては他の魔族も困るからな。
「武器を奪う?使うの?」
「いやいや、使わないって。原因そのものは分かってるんだから、それなら人族の使っている武器を調べれば何か解決方法が見つかるかもだろ?」
「調べる……。」
アルフォシーナは不思議そうにしているが、俺の言っている事が理解出来ない訳ではなさそうだ。
「魔族は元々強者だから、そういった細やかな手段とか考えないんだろうけどな。力で押し開けないなら、別の策を考えるんだ。」
「ん、分かった。でも魔王様行くのはダメ。あたしが行ってくる。」
首肯し、自らが挙手する。
分かってはいたが、ある意味過保護だよな。
「あ~……、そうきたか。けど俺も、アルフォシーナを一人でいかせるのは反対なんだ。って事で、二人で行く。人族の拠点潜入と武器の奪取が目的で、無闇に戦闘をしに行く訳じゃない。」
これは情報収集の一環なのだと言い切り、反対意見を抑え込んだ。
必要なのは、確実な打開策なのだから。