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召喚魔王の俺  作者: まひる
第3章
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4.魔王なのに留守番です─8


 そんなこんなで(ようや)く拠点となるテントまでやって来たのだが。

 中は喧騒が漏れているなんて可愛いものじゃないくらいうるさい。

 うん……、あまり良い予感がしないな。

「お邪魔しま~す。」

 とにかく入って見なければ分からないと決心し、俺は声を掛けながら入り口らしき布を(まく)り上げてみた。

 あ~………………、何て言うかな。

 言葉を失って立ち尽くしてしまったのは俺の未熟さ(ゆえ)だが、それ以上に足の踏み場もなかった。

 至るところに転がっている魔族達。正確には生きているのだが──その誰もが肉体を其処彼処(そこかしこ)損傷し、魔力の源である黒い霞を散らしている。


 『有り得ない』というのが俺の第一感想だった。

 基本的に魔族の存在は魔力の塊である。つまりは肉体を形成している魔力は、消耗すれども部位欠損など考えられない無形のものだ。

 しかしながら、目の前に実際にあるのだから有り得ない訳はない──それ程に信じがたい光景だったのである。

「あ……、魔王様。」

 呟くように聞こえた声に、ゆっくりと視線を向けた。

 そこには憔悴(しょうすい)したようなアルフォシーナが座り込んでいる。

「……よお。」

 彼女を目にした俺は、間抜けにもこんな返答しか出来なかった。

 さらにみっともない事だが、多少顔がひきつっていたのは仕方がないと思ってくれ。

 これでも平生(へいぜい)を決め込んだふりして、軽く手を上げて見せているんだ。


「ど……した、ですか?」

「あ、俺がそっちに行くから。」

 ヨロヨロと立ち上がったアルフォシーナに、俺はその場で待機するように声をあげる。

 そしてフワリと闇魔力の翼で舞い上がり、あちこちで転がっている魔族を飛び越えて近付いた。

 うん。アルフォシーナは怪我をしていないな。

 不躾ながら視線で彼女を確認し、それだけはホッとした。

「魔王、様……あの……。」

「ん?」

「これ……は?」

「あぁ、何となく?」

 思わずその頭を掻き(いだ)いてしまった為、困惑したようなアルフォシーナの言葉が返ってきて俺は苦笑を漏らす。

 彼女の戸惑いは分かるが、今の俺には心の余裕がないのだ。

 本能的に感じた『安堵』を、『アルフォシーナを抱き締める』という形にしてしまっている。


「で、これは一体どうなってるんだ?」

 それでもハグという形にする為、すぐに意識を切り替えて身体を離し、現状を問い掛けた。

 戸惑いと共に困惑を見せていたアルフォシーナは、その俺の問いに顔を青褪めさせる。

「ご、ごめん、なさいっ。」

 普通に立っていても俺より小さな彼女の頭が勢い良く下げられた。

 あ、これはマズったな。


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