4.魔王なのに留守番です─5
「魔王様?」
「あ……いや、問題ない。」
訝し気なダミアンの声に、俺はノロノロと頭を上げた。
戦争の意味に気付いたからといって、今更どうなる訳でもない。
これは『取るか取られるか』なのだ。
戦争のない平和な国に生まれ育ったからといって、知らなかった訳じゃない。世界の何処かで何かしらのドンパチはあったんだ。
ただ、現実味がなかっただけ。
「お顔の色が悪う御座います。」
「大丈夫だ。少し現実を再認識しただけの事。とにかく、人族の武器と防具を急いで調べさせろ。攻撃が通らなければ、いくらこちらが力押ししたところで無駄だろ。」
「はい、おっしゃる通りで御座います魔王様。早急に調査させます。」
ダミアンが恭しく頭を垂れ、執務室を出ていくのを見送る。
とにかく情報がほしかった。
ゲームの世界みたいに、対魔族特化の物質があってもおかしくはないからな。
ここは人族に優しくはない世界環境かも知れないけれど、現実に人が生きているんだ。
ただ弱いだけでは進化しなかっただろうし、文化を発展させて国なんて作れる筈もない。
って事は、魔族の弱点みたいなものがあるのか?
俺は椅子に背を預けたまま、腕を組んで考える。
弱点と言うか、確実に滅するには『核』の破壊なのだ。
攻撃が通らないとは、物理攻撃も魔法攻撃もという意味なのだろうか。魔法攻撃は無効化魔法で可能かとも思えるが、強力な魔法にはより強力な無効化魔法が必要になる。
物理攻撃も勿論で、魔族のそれに人族が易々と対抗出来るものだろうか。
「魔王様、全員に通達完了致しました。」
考え込んでいたが、ノックの音で意識を戻された。
入ってきたダミアンの第一声は先程の指示に対する答えであり、迅速な対応が彼の利点なのである。──変態だかな。
「あぁ、早いな。……ダミアンの意見を聞かせてほしいんだが、物理攻撃も魔法攻撃も無効化する素材は何だ?」
俺は自分の中で行き詰まってしまった為、仕事は出来る部下の知恵を借りようと思った。
「素材ですか……。申し訳ございませんが、双方ともとなりますとわたくしの知る中にはないようです。しかしながら魔王様。物理攻撃も魔法攻撃も無効化するのであれば、無敵と言わんばかりですね。」
「あ……、それもそうだな。何でそうなった?それこそ『矛盾』じゃないか。ん~……、俺の土壁や風壁。あとは闇影なんかも対物理対魔法特化だけど、無効化と言うのとは違うんだよな。どちらかと言うと耐えうるモノに対して……、つまりは自分より弱いモノに対してだけ対応可能なだけだ。」
「そうですね。通常、どの様な武具防具。勿論魔法にしても、力量を越えた対処は出来ません。」
ダミアンに応えられ、俺は今の思いを口に出していた事に気付く。
ダメだ。思考にのめり込んでて、知らず独り言を漏らしていたらしい。
今は相手がダミアンだったから良いものの、立場上言質を取られないようにもっと気を張らなきゃ。