2.魔王として何をしましょう─2
「帰られては、困りますがね。」
「インゴフは魔法士なんだろ?だったら、もう少しあの変態を調教しとけよっ。」
「無理ですよ、魔王様。ワシは魔法士じゃが、ヘイツ次期宰相候補は、それ以上に強い。あやつを強制出来るのは、魔王様のみです。」
俺の帰還宣言にも動じず、インゴフは変わらず楽しそうだった。
この蛇顔、一度ぶん殴りたい。
ってかこのデカさ相手でも、ダミアンの方が強いとかって、冗談だろ?
「マジ?」
「マジと言う言葉は、分かりかねますが、本当でございます。」
俺への返答を真顔で─いや、表情は変わらないんだが─するインゴフだ。
けどどうやら、本気でダミアンは強いらしい。大きさと強さは、比例するものではないようだ。
「…それならとりあえず、見極めてみる。手駒を知らないままじゃ、事を起こせないからな。」
顎に拳を当てて考えていた俺だが、顔を上げると同時に、真っ直ぐインゴフに視線を向けて告げる。
とりあえずインゴフは、魔王としての俺に、国の統治を求めているようだ。
「インゴフ。この国の資金力はどうなっている。前魔王としての記憶は引き継いだが、細部に漏れがある。周囲の人族とのいさかいも、金がらみだろ。」
「やれやれ…。ワシは魔法士でな。金勘定は、専門外じゃ。」
急に話し方を変えたインゴフ。
いや、元に戻したと言った方が良いか。
魔王の記憶では、魔法士は国土の結界の維持、管理を主に行っているようだ。それは、それだけ大きな魔力を有しているとの証明になるが、魔法特化型であるというだけ。
魔族は心臓の代わりに核と呼ばれるものを、身体の何処かに宿している。決して不死ではない。そしてその数は、強さと比例するらしい。
シラを切ったという事は、知っているが教えられないと言っているようなもの。つまりは、インゴフより強者が絡んでいる。
「なぁ、インゴフ。俺は魔王として、魔族から何を求められている?」
質問を変えようか。
「そうじゃな。魔族も、一枚岩ではない、という事かの。」
毛むくじゃらの手で、蛇頭を撫でる。
そりゃ、そうだろう。人だってそうだ。
平和を求める者もいれば、争いや、利益のみを求める者もいる。
つまりは人としての国の在り方と、変わらないじゃねぇか。高校生だった俺に、大きく求めすぎじゃね?
「俺ってさ、どれくらいの強さ?」
「魔王様としての、全ての記憶と、力を継承したのじゃ。打ち倒せるとすれば、人族の使う剣のみ。それ故に、人族であるソーマを、魔王様に選んだのじゃ。」
インゴフは、迷いなく断言した。
ってか、キッパリ言い切ったよ。やっぱ、勇者の剣とかがあるんじゃん。
人族<魔族<魔王<勇者(人族)<魔王(人族─俺)?
なんか、凄い図式なんだけどっ。