4.魔王なのに留守番です─3
人族の召喚は対象者の寿命を削るものだとダミアンが言った。
つまりはそれって隼人が危ないって事で。いや、既に遅い?
俺は混乱する頭で必死に考える。けれどどんなに頭を捻っても、解決策なんて魔王知識にすらない。
「……と言う理由から、勇者が勇者たる力を失うには核を破壊すれば良いのです。そうすれば、勇者といえどもただの人族となって死するのですから。」
自身の知識に失望した時、先程からずっと話していたであろうダミアンの声が聞こえた。
──って言うか、何だって?
「人族は我々魔族と違い、その身の内に抱える核は一つ。魔王様が自称勇者と対した時、わたくしは即座にその人族の核を引き貫いて周囲を薔薇色に染め上げて差し上げます。そして治癒魔法にて一度修復した後、再度殺しましょうか。次は治癒魔法なんて役に立たないくらい粉砕してしまいましょうね、ふふふふふ……。」
酷く楽しそうに歪んだ笑みを浮かべるダミアン。
綺麗な顔が悪い笑みを浮かべると、こうも魔王的な感じになるんだな。
おっと、今はそれどころじゃない。それよりも気になる内容が含まれていたのだ。
「ダミアン。治癒魔法では失った部位も復元出来るのか?腕や足は勿論、内臓……心臓や脳すら。」
「えぇ、勿論です。その分多くの魔力が必要になるのと同時に、対象者へ損失した時と同等の苦痛を与えられます。拷問には良く使われる手法ですね。あぁ、脳は一度損傷すると治癒の衝撃で情報を失いかねないので、玩具にする時か壊す目的の場合に限りますけれど。」
当然であるかのように答えるダミアンは、陶酔した表情を変えない。
俺に関する事でなければ、至極簡単にドSでいられるようだ。──嫌な発見でもある。
「一度破壊して……治癒、か。」
「何ですか、魔王様。やってみたいですか?それならば、そこらで人族を捕獲して来ましょうか?」
「馬鹿を言うなっ。失敗したらどうするんだよ!」
「壊れるだけで……あぁぁっ。」
考え込みながら呟いた俺に、『コンビニでパン買ってきましょうか』レベルの軽い口調でダミアンが告げた。
アホかっての。それでもまだ続けようとしたから、思い切り闇魔法で拳を作って頭をどついてやる。
いや、地面に倒れ込んだダミアンが恍惚とした表情で身悶えているのは気にするべきでないのだ。
うん、気にしたら負けだろう。
でもまぁ、最悪な手段として頭の片隅においておこう。
希望はそれ以外の方法で隼人の勇者力を削げれば良いのだ。元の世界に帰れないのだとしても、短命で終わる未来なんて来ない方が良い。
ってか、人族も酷いよな。勇者が便利屋以下の扱いだなんて、マジで勘弁してくれよ。