4.魔王なのに留守番です─2
「あの人族が勇者だって言ったの、聞いてたんだろ?」
「はい。しかしながら自称勇者などは数多くいる為、真偽の程は構わないのです。それよりもわたくしが特別気になったのは、魔王様とあの人族の関係です。どちらかと言うと、魔王様の方が気にされていた感じを受けました。」
どう説明しようか迷いつつ口を開いた俺だが、ダミアンはストレートに確信をついてきた。
あ~うん、分かる……よな。連結で繋がっていなくても、あの時の俺は自分でも挙動不審だったと思うし。
「隠しても仕方ないから言うが、あれは俺の友達……だった。って過去形になるんだよな、きっと。」
自嘲気味に笑うが、ダミアンからは声の反応がなかった。
聞こえなかったのかと不思議に思い、落としていた視線を上げれば何故かふるふると震えている。──いったい何があった。
「ダミアン?」
「……はっ。申し訳ございません、魔王様。今の魔王様があまりにも儚げで美しく……。」
訝し気に問い掛ければ、恍惚とした表情で語り始める始末。
俺はその言葉の途中でダミアンの腹を拳で殴って止める。
「おいっ。それ以上言ったらぶっ飛ばすぞ。」
俺の拳程度では何のダメージも受けないのは分かっている為、俺は声を低くして警告しながら追加で闇魔力を放出した。
悲しいかな、俺の腕力ごときではこいつにノーダメージなのである。
「あぁ、申し訳ございません魔王様。私とした事がつい嬉しく……あ、いえ過剰な反応をしてしまいました。」
反省などしていなさそうに頭を下げるダミアンに、俺は内心舌打ちをした。
この傷口に塩を塗るような真似、わざとなのか疑いたくなるぞ。
「とにかく。隼人は同郷のよしみだ。といっても、それすらアイツは覚えていないみたいだったが。」
「同郷の……、ですか。では、彼も召喚された異世界種なのですね。それ故、わたくしの索敵に掛からなかったのですか。納得しました。」
俺の言葉に、ダミアンは訳知り顔で頷いた。
何だよ、一人で納得しやがって。
そんな風に不満に思っていたら、久し振りに魔王知識から映像が自動再生する。
どうやら召喚された異世界の種族は、こちらの探知魔法が効かないらしい。つまりは俺もか。
「時折人族の中で異世界召喚が行われていますが、あれは所謂禁呪です。呼び寄せるだけで還す事は出来ず、界を歪めて渡ってきた者に在らざる力を与えますが、対価として命を削ります。」
話の初めの方はゲームみたいだと思っていた俺だったが、ダミアンの事も無げに告げられた後半の内容に目を見開いた。
「な……っ?」
「はい。残念ながらあの人族は、本来の寿命の半分も生きられません。そこが我々魔族の行う魔王選出の儀と異なるところですね。魔族の召喚とは根本的に違うのです。」
驚愕する俺に構わず、ダミアンは何処か誇らしげに言い放つ。
いやいや。どれが良いとかの問題じゃなくね?