4.魔王なのに留守番です─1
「何っ、でだよっ。」
思わずカッとなって叫んだ。
ここは玉座の間で、玉座の前には四魔将軍。俺の視線の先、左後ろにはダミアンがいた。
「魔王様が魔王様であられるからです。」
ダミアンの静かな言葉に、俺はヒクッと顔がひきつる。
そんな事は言われなくても分かってるし、分かっているからこその判断だった。
ギリッと歯噛みをし、一旦怒りを無理矢理押し込める。
感情的になってはならないと、自分に言い聞かせながら。
「……戦闘が長引くのは本意じゃないんだ。」
「それは魔族の総意でありますが、我々四魔将軍が各地に出向くのです。総大将であられる魔王様が魔王城を不在になさる理由にはなりませぬ。」
必死に感情を抑えているのに、次はコンラートからの進言だった。
視線を向けると、アルフォシーナやミカエラまでもが同意見であると言わんばかりの表情をする。
周囲からの視線が痛い。
分かってるさ。俺が口を出す事は、四魔将軍への信頼に関わるってくらい。
「でもっ。」
「魔王様。時には不動の精神も必要なのです。」
「っ……、分かってるし。逐一情報は流せよ?」
ダミアンに静かに諭され、悔しいがここは引く事にした。
「畏まりましてございます。」
恭しく頭を下げるコンラート。
「ったく、面倒臭い奴だなぁ。魔王様なんだからドシッと構えとけ。」
それに比べ、頭をガシガシ掻きながら吐き捨てるフランツは相変わらず。
だがこれでも前よりは態度が軟化しているのだから良しとするか。
「わっちは蒼真と黒雀ちゃんで繋がっているものぉ。」
「あたしも連結で繋がっている。」
ミカエラとアルフォシーナは、何故か無意味に張り合っていた。
黒雀か……。皆につける事は可能だが、俺の精神的に難しいんだよな。サポートが出来ない形だけの代物では意味がない。
「では、各自持ち場につくように。」
「「「「了解した。」~っ。」だわよぉ。」なの。」
一斉に頭を下げると、玉座の間から四人が退室する。
残るは俺の左後ろのダミアンだけだ。
「……何か言いたげだな。」
「不躾ながらお伺いいたします。魔王様はあの人族とはどのような御関係なのですか。」
静かな問い掛けである。
しかしながらその瞳には、普段は見ない強い熱が見えた。
「あれか……。」
思わず遠い目をしてしまう。
あの隼人との邂逅から一月程が経つだろうか。
勿論その間何もしなかった訳ではなく、俺はリミドラと連絡を取りながらも犬種の隠密的な存在から情報を集めていた。
リミドラには毎回翻訳業務をさせてしまってはいるがら本人も嫌ではなさそうでとても助かっている。俺の手伝いになれる事が嬉しいらしく、更に魔王城に頻繁に訪れるので高位魔族からの嫌がらせも減っているとの報告も受けていた。
ったく、周囲の評価は勝手なものだな。