表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚魔王の俺  作者: まひる
第3章
152/248

3.魔王は万能ではありません─6


「それで、何かあったのか?」

「え?」

「いや、動いたから落ちたんだろ?」

「あ……、はい。」

 抱き上げて近くなった瞳を覗き込めば、羞恥からかリミドラの大きな金色が潤む。

 うわぁ……、今のヤバかった。このまま吸い込まれそうで、何だか身体も熱くなってきたし。


「悪かったな、不安定な場所に放置して。」

 リミドラを左腕に乗せるように抱き上げていたが、静かに下ろして床に立たせた。

 俺はそのまま自分の感情を誤魔化すようにしゃがみこみ、椅子の傍に落ちていたクッションを拾い上げる。

「あの……、魔王様。書類の、件なのですが。」

「ん?」

「勇、者の……存在、確認が……ありました。」

 妙な緊張感を感じさせる間の後、リミドラが告げたのは隼人の事だった。

 報告書によると俺と同じ匂いがする人族で、聖剣臭い──犬種の判断だからか臭い重視らしい──男がいるとの事。すでに国境近くの人族の集落に現れ、結界を強化して廻っている等の内容だったそうである。

 あ~……、うん。出会う前に聞きたかったかも──いや、それはそれで結果は同じか。


「あぁ、知ってる。会ったし。」

「え……っ!だ、大丈夫だったのですかっ?」

 事も無げに答えれば、酷く慌てた様子でリミドラが俺の両腕を掴んできた。

 それにはさすがに驚いたのだが、本人はどうやら無事である事の確認をしているつもりのようで。あちらこちらに視線をさ迷わせ、怪我などをしていないか嗅覚も合わせて診察(?)している。

「安心しろ、何もなかったから。まぁ……、多少じゃない驚きはあったけどな。ところでリミドラ。この体勢……、ヤバくないか?」

 しゃがんでいた俺は、勢い良く飛び掛かってきたリミドラに押し倒される形で床に尻餅をついていた。

 そして彼女は俺の腹の上に乗っている状態で。


「ワフッ?!」

 現状に気付かされたリミドラはボンと音がしそうな程に赤面して硬直し、その尻尾の毛は面白いくらい逆立っている。

 彼女の反応に苦笑を溢しながらも、それ程までに心配してくれるのが嬉しくもある俺。

「まぁ、女に押し倒されるって良い経験が出来たけどな。」

 笑いながら身体を起こし、リミドラを抱き上げるように膝に乗せてやった。

 ちなみに人間だった時の俺ならば、こうはいかないだろう。大体腕力が足りなさすぎる。いくら小さいとはいえ、相手は赤ん坊でないのだ。

 これも魔王となった利点なのだろう──と思いたい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ