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召喚魔王の俺  作者: まひる
第3章
137/248

2.魔王と勇者は相容れません─2


「俺、旅をしてるんです。ここから南方のレバムから来たんですけど、ケタジストから北に行くと人族の国があるって本当ですか?……って、あれ?俺、警戒されてますね。」

 ヘラリと笑い、両手を軽く上げてみた。

 ちなみにレバムから来たってのは嘘じゃない。ここに来る前にそこへ立ち寄ったのだから。

 今の俺、腰には細身の剣を()いて短剣を挿しているが、明らかに身体つきからして武人とは程遠くある。しかも今は魔力を封じているから、即座に攻撃体勢に持っていくのは骨が折れるな。

 それでも人族に無謀に突っ込んだのは、彼等から生の情報を得る為だ。

 魔族の国の四方には人族の国があるが、北が一番入りやすい。東は切り立った山脈があり、西は岸壁と海。南は広大な砂漠がある為だ。

 その分北には深い森があるが、そこに住む魔獣は程度が低いので、存外良い狩り場となっているらしい。


「人族のなりをしていても、魔族が皮を被ってる事もあるからな。お前さん、本当に人族か?血を見せてみろ。」

「は?」

 いきなりの言葉に唖然となるが、それよりも暴れるダミアンを押さえ込む事に気を取られた。

 やはりというか、素直に肩乗り鷲ではいてくれない。

「魔族は血を流さないからな。」

 だが人族の続けられた言葉に納得してしまう。

 確かに魔族は血液を持たず、傷から溢れるのは身体を構成している魔力。しかも黒い霧となって大気に溶け出すように出るのである。


「分かりました。」

 俺は鷲になっているダミアンの頭部を撫でて落ち着かせると、腰につけた短剣を腕に当てた。

 スッと刃が肌を滑ると、当たり前のように痛みと赤黒い液体が溢れ出てくる。

「おぉ~、済まない。ちゃんと人族だったな。申し訳ないな、こんな確認方法を取って。」

 俺の出血を確認した男は、先程と打って変わって笑顔で歩み寄ってきた。

「いや、問題ないですよ。これは他のヒトを守る為なんでしょう?」

 首を振りながらも短剣を腰の鞘に挿し、俺は手持ちの布で腕を拭う。そして傷口が見えないようにクルクルと包帯のように巻き付けた。

 前回誘拐プラス暴行された時に知ったのだが、俺の中には人族と同じ血液が流れている。ただ非常に濃い闇魔力を含んでいる為、近くで見ると揺らめいて見えるのだ。

 マジで初めて見た時は驚いたし。微妙にキモい。


「って言うか、魔族が人の皮を被るってのは何です?」

「知らないのか。自らが食したであろう人族の皮を被る事で、我々の中に紛れようとする魔族がいると聞いた。こんな小さな集落じゃ食事量が足りないんだろうがな。ここらじゃ見た事はないが、人族の国では度々あるらしい。」

 農耕の道具を肩から下ろし、苦い顔を見せる人族の男。

 出血を見せた事で、俺は既に彼の中では同族と見なされたようだ。


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