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召喚魔王の俺  作者: まひる
第3章
132/248

1.魔王は人族でした─7


 翌日の俺とダミアンの仕事は多忙を極め、元々食事を取らなくて良い体質もあって夜が()けるまで机にかじりついていた。


「とりあえずキリがついた……。」

 ボヤキつつ、執務机に倒れ込む。

 羊皮紙の上に乗らないように気を付けてはいるが、机の上もインクが少なからず付いているので綺麗ではない。

「魔王様。お顔が汚れてしまいます。」

 ダミアンの少しだけ呆れたような声に視線を向けた。

 彼は応接テーブルにお茶を出してくれているが、本当にコイツはタイミング良く入れてくれる。

 これで変態でないのならば最高なのだが。


 応接テーブルに移動し、柔らかなソファーに身体を沈めてお茶を飲む。

 うん、旨い。この(ほの)かな甘味が、今の疲れた身体に染み込むようだ。

「仕方ないだろ。ヒトと違って飯も排泄も不要とはいえ、終日の事務仕事は疲れる。(おも)に精神が。」

「魔王様は人族ではないのですから、あとは慣れですよ。」

 その間に俺の執務机を清掃しているダミアンだったが、事務仕事に対するフォローはない。

 これが当たり前とか言うなよ。


「くそぉ、慣れたくないぞこんなもん。ってか話は変わるが、人族の集落は遠いのか?最近の報告に、彼等の不穏な動きが多くなってきているとあるが。」

 やさぐれそうになりながらも、カップをテーブルに戻しつつ問う。

 俺に回ってくる書類は決裁は元よりだが、魔族としての各方面からの報告が数多く占めているのだ。


「そうですね。集落自体は国内にも幾つかございますが、国規模となりますと距離があります。そして前回は魔族の国(われわれ)を囲む四カ国の人族の国から一斉攻撃を受けましたので、現四魔将軍に四方へ飛んで抑えてもらいました。それもあって最近は少し大人しくあったのですが、今回は様子が異なるようです。」

 話している間にもテキパキと執務机の片付けをこなした後、自分の机から一束の羊皮紙を持ってくる。

 どうやらそれが人族の動きを取りまとめた書類のようだ。

 って言うか、国内に人族の集落がある事にも驚く。


「違う、とは?」

 ダミアンの言葉に引っ掛かりを覚えた俺は、真っ直ぐに彼を見上げる。

 その視線を受け、ダミアンは手にしていた羊皮紙を俺に差し出した。

 それには国の被害状況が細かに記してあり、年月を追って増加傾向にある事が分かる優れもの。


「はい。元々人族は我々の土地を求めていたようなのですが、今回は魔族に対する敵対行為が目につきます。」

「俺が来る前に勇者がいたんだろ?それはどうなったんだ。」

 俺は報告書を目で追いながらも、自分の中の魔王知識を探った。

 前魔王を倒したとされる勇者。しかしながらそれに対する知識は乏しく、人物像すら光となって認識出来ない。


 更なる過去を辿(たど)っても同じである。

 勇者という存在を明確に伝えない為なのか、引き継がれる知識にその人族の容姿は何処にもなかったのだ。


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