1.魔王は人族でした─6
「そうか……。」
何だか居たたまれなくなる。
自分が仕出かした事で部下が迷惑を被ってはダメだろ。
「魔力が回復したら俺も手伝おう。」
「いいえ、滅相もございませぬっ。」
「ばぁか、邪魔だっての~。」
「蒼真は別にお仕事があるじゃないのぉ。」
「魔王様の仕事、たくさんある。」
俺の一言に、総出で反対の声が上がった。
──お、おぅ…。
思わず怯んでしまう程、皆の意見が一致していたのである。
「魔王様。明日には魔力が回復するでしょうが、本日の件と相俟って、明日の書類は二山ではすまないかと思われますが。」
若干申し訳なさそうに、ダミアンが告げた。
あ、そうか。これ等の処理の書類も追加されるのか。
思わず遠い目をしてしまうのは、仕方のない事だろう。これを自業自得というのかもしれない。
それに、ダミアンも巻き込んでいるのは事実だ。
「分かった。」
出そうになる溜め息をどうにか呑み込み、俺は素直に首肯するのだった。
否。せざるを得なかったのである。
「それでは、我々は持ち場に戻ります故。」
「あぁ、手間を掛けさせた。」
「大人しく寝ているのよぉ?あ、ダミアンちゃんは蒼真を襲わないようにねぇ。」
「し、しませんっ。」
「ヤるなら分からないようにな~。」
「フランツ、うるさい。」
「あたしが見張ってる。」
「お、おぅ。」
「魔王様の回復の邪魔ですから、皆さんは仕事をしてくださいね。どちらにせよ、わたくしは動けませんが。」
口々に告げる四魔将軍達の言葉に、俺とダミアンが返答しながらの一時。
しかし何故だか微妙に楽しくもあった。
「……さてと。とりあえずストレスは発散出来た。」
皆が退室した後の変な静かに堪えきれず、俺は独り言のように呟く。
「仕事が増えた感じはしなくもないですが、魔王様は身の内に溜め込み過ぎる感があります。暴発しない為にも、もう少し魔力を放出した方が宜しいかと。」
「うっせぇ。事務仕事ばかりの日々で、何処にそんな余裕があるって言うんだよ。」
「それもそうなのですがね。」
ダミアンが困ったように告げるが、俺は呆れを滲ませながら答えた。
と言うか、何故こんなに書類ばかりなんだ魔族。
それとも人に限らず、上層部はこんなものなのか?
俺は自由に動けない身体を弄びつつも、この先の政に気が遠くなりそうだった。