1.魔王は人族でした─5
「全く貴方達ときたらぁ。」
「もう少し、考えて。」
ミカエラとアルフォシーナに冷たい目で見下ろされる。
俺の横にダミアンが寝ているのだが、ここは医務室。王城内にある各鍛練場に併設されている場所だった。
「ったく、驚かせやがって~。警告音が聞こえて駆け付けてみれば、地下の鍛練場が崩壊したって聞いてよぉ。」
ベッド横に足を組んで座っているフランツは、腕を組んで偉そうである。
だがそれに対して何も言えないのは、俺とダミアンの鍛練という名の運動が引き起こした結果だったからだ。
あの時──二人の力が衝突し、核爆発と見紛う程の衝撃が解放された。結果、地下鍛練場は結界ごと崩壊。一時は何処からの襲撃かと、魔王城が騒然となった程である。
勿論俺と連結している四魔将軍は警告音で呼び出され、崩壊した地下から俺とダミアンの救出。同時に瓦礫の撤去や安全策、結界の再構築依頼等、細々とした作業を行ったと聞いた。
そしてコンラートはその最終調整に行っていて、現在も戻っていない。
「すまなかったな。」
「申し訳ありませんでした。」
二人して謝罪するも、ベッドに横たわったままでは全く格好がつかなかった。
「現魔族最強の二人が同時に倒れたら、人族にナメられるだろぉ。ってか、あの魔力波は人族の集落にも届いてるだろうから、近いうちに何らかの反応はあるだろうがなぁ。」
大きく溜め息をつくフランツ。
四方の人族とのいざこざが落ち着いたばかりだというのに、本当に申し訳なかったと思う。
「もう終わったことだものぉ。蒼真だって、たまにはハジケたいのよぉ。それに人族が何かしてきても、わっち達がまた遊んであげれば良いだけでしょぉ?」
「ん。魔王様は寝ていて良い。あたしが守る。」
「はいはい、そ~ですねぇ。そん時は俺も強制参加だからねぇ。……頼むぜ、本当にっ。」
ミカエラとアルフォシーナから微妙に擁護されつつも、フランツの怒りが完全に静まった訳ではなかった。
そこへ、静かなノックの音が響く。
「魔王様。」
「コンラートか。入れ。」
「お目覚めのご様子で何よりでございます。」
入室の許可を得て入ってきたコンラートは、俺を確認して深く頭を下げた。
「あぁ、世話をかけたな。それで、地下はどうだ。」
「滅相もございませぬ。地下鍛練場は上部ドームの崩壊は勿論の事、場内は大きく欠損しておりました。現在土魔力の使い手が総出で形成作業中にございます。暫くは使えませぬが、王城までは被害がありませぬ故、魔法士のお歴々からは安堵の溜め息が聞こえておりました。」
出来るだけ感情を見せないように問うも、コンラートからの返答は中々に凄いものだった。
本当にすまない。