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召喚魔王の俺  作者: まひる
第2章
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6.魔王は試作試行役ですか─10


「失礼します、魔王様。」

「ん?あぁ、ニコラ。どうした、また魔道具が出来たのか?」

 いつものようにダミアンの執務室にいる俺を、当たり前のように訪ねるニコラ。

 あの後から(しばら)くして訪問が始まり、今では魔道具の試作品が出来る度に持って来るようになった。


「はいっ。今度のは水魔力で幻影を作り上げる魔道具であります。前方に投影する形になるのですが、距離感は魔力量によって調節が可能となってます。」

 にこやかに告げる兎耳は、相変わらず真っ白でふわふわ。顔立ちは元気一杯中学生男子って感じか。

 もうフードを(かぶ)って見目を隠す事もなく、獣人族兎種である事に拒絶反応を示す事もないようだ。


「ん、良いな。けど、何で毎回使用魔力が水魔力なんだ。明らかに作為的な何かを感じるぞ。違う魔力を使うように言っておけ。」

「そうですね、伝えます。やはり、魔王様に御使いになっていただきたいというコンラート様の意向でしょうが、確かに偏り過ぎていると僕も思いますので。そ…それよりも魔王様…、あの…。」

「ん?」

 話しながらも、ニコラがモゾモゾと身体を動かしている。恥ずかしそうに眼を伏せながら、頬に僅かな赤みも差していた。


「魔王様。わたくしも…触って、欲しいです…っ。」

 左側の少し離れた場所にある執務机から、ダミアンの押し殺したような声が聞こえる。

 視線をチラリと向けると、身体を器用にくねらせて恍惚(こうこつ)とした表情をしていた。


「嫌だ。お前はモフモフしてない。それに比べてニコラのこの兎耳は良いぞ。最近リミドラにも会ってないから、モフリ禁断症状が出ているらしい。」

 俺はそんなダミアンを華麗に拒否しつつ、手元にあるニコラの兎耳を思う存分モフる。

 つまりは、広いソファーに隣り合わせで座っているのだ。過剰なスキンシップと言わせない。

 だいたい、あの程度のダミアンは放っておいても問題ない。変態度合いの解放がまだ薄いからな。


──誰だ、俺も変態の仲間入りかと言った奴は。俺は決して変態等ではない。このふわふわモフモフが好きなだけだっ。


「魔王様…。あの…、そんなにこの耳が…触っていて良いものですか?」

「おぅ。」

 モジモジしながら問うニコラに、ゼロタイムで答えてやる。

「それなら…良かったです。それだけで僕は…兎種で良かったです。」

「獣人族だからって気にするな。ニコラはこのふわふわモフモフの耳が良い。魔道具に対する発想力が良い。コンラートの補佐官をやる度胸も根気もあるんだ。あと、俺の魔力に呑まれないのも気概(きがい)がある証拠だな。」

「魔王様…わたくしも誉めて欲しいです。いえ、それよりも虐めてほし…ぐはっ。」

 横からおかしな空気を放ち出したダミアンだが、即座に闇影(ダークシャドウ)で打ち捨てた。

 というか、闇魔力で小さな球体を作って頭部に当てたのである。その直撃を受けて横倒しになったダミアンだが、丈夫なので傷一つ付いてはいないだろうがな。


 ニコラが驚いていたが、まぁ気にするなと頭を撫でておいた。 


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