6.魔王は試作試行役ですか─9
あれから宝物庫はダミアンと粗方魔道具を確認し、種類ごとに纏めておいた。
やはりというか、攻撃補佐的な魔道具が多かったな。使うのは魔族である為、攻撃ならば自分達で行った方が手っ取り早いからなのだろうけど。
「で、お前がニコラだな。」
そして今、俺がいる場所はダミアンの執務室。目の前にはニコラである。
彼は前と同じくフードを深く被ってはいるが、何故呼ばれたのか分からず不安気にソワソワと目を泳がせているのが気配で分かった。
「…はい…。」
問い掛けには小声で応えるものの、決して顔を上げて俺の目を見ようとはしない。
まぁ、それは俺が無意識に垂れ流している魔力のせいもあるんだろうけど。何故だか不快に感じた──ケッ。
「ニコラ・アデル。魔王様は貴方に無体を強いる訳ではありません。フードを取りなさい。」
静かな口調でダミアンが告げた。
いやいや。ただでさえ怯えて萎縮しているのに、唯一の自分を守るフードを取れとか、鬼だろ。あ、ダミアンは鬼族であるんだが。
「…は、い…。」
ニコラは物凄く小声で応じ、震える手でフードを外す。その瞬間、ピョコンと真っ白な兎耳が飛び出した。
──おおおぉぉ~…。さ、触りたいっ。モフモフの白い兎耳…、良いいいいぃっ!
思わず目を見開き、ニコラの耳を凝視する。
ここで叫ばなかっただけ、まだ許されるだろう。それくらい俺は興奮していた。
だがそれを出さずに問う。
「ニコラは魔道具に詳しいと聞いたのだが?」
「は、はい…。あの…少し、は…。」
ビクッと大きく震え、ソファーに沈みそうな程小さくなって応えるニコラ。
何だか、こっちが苛めている感じに見えるのは気のせいじゃないよな。
「あの筋肉と魔道具が好きなコンラートの下で働いているのだろ?少し詳しいくらいじゃ、キツイんじゃないか?」
「あ…、いえ…。その…。他の魔族よりは…詳しいと…。」
俺の嘲るような言葉に、ニコラは慌てて訂正をし始めた。
やはり、コンラートの下で魔道具補佐官をしているという自負はあるんだな。
「ん、じゃあ決まりだ。」
「は…い?」
「魔王様。御言葉ながら、まだニコラ・アデルに説明をしておりませぬ。」
呆けたニコラに代わり、ダミアンが進言する。
「あ、そうだったか?…ダミアン。」
俺はいつものように斜め左後ろに視線を向け、説明役をダミアンに丸投げした。
「はっ。ではニコラ・アデル、わたくしから説明をさせていただきます。魔王様は魔道具の応用的な発展に御興味を抱いておられます。魔力要素に拘る事なく。攻防問わず。コンラートに様々なアイデアを与えてくれませんか。勿論、都度の報酬を考えています。魔道具の成果ありきですが。」
「…っ、はいっ。」
ダミアンの説明が終わると、ニコラは一瞬目を見開いたもののハッキリと声を上げて首肯する。
それは今までになく、生き生きとしたものだった。