6.魔王は試作試行役ですか─6
俺とダミアンはそのまま地下の鍛練場を辞する。
コンラートはもう少し地下に残って、魔道具の試行結果を纏めるとの事だった。
「それにしても魔王様。少し無理をし過ぎではございませんか。」
「ん?…まぁ、何だ。俺にも意地があるからな。道具なんかに使われてやるもんかって感じで、吸いきれない程の魔力を捩じ込んでやった。」
通路を歩みながらも眉尻を下げるダミアンに、俺は苦笑してみせる。
やり過ぎた感はあったが、途中で引けなかったのも事実なのだ。
「火魔法しか使わなかったのは、コンラートに“全”である事を知られない為ですか。」
問い掛けの体をしているが、言葉尻は断言である。
やはり、ダミアンは気付いたか。
「まぁな。あの魔道具馬鹿に魔力属性を知られたら、それこそ俺が実験台になりそうだからな。」
「ふふふ、良く御存知で。あれは見た目と違い、根っからの研究者ですからね。あの風体は研究気質を隠す為と、弱者でありたくないという願望からです。」
俺の読み通り、ダミアンは否定しなかった。
これからもコンラートに魔力属性を知られないようにしないとな。
──っていうか、今こいつは何を言った?
「願望?」
思わず振り返ってダミアンを見上げる。
本当にこいつ、俺の斜め左後ろが好きだな。
「はい。本人は至って真面目に頭脳労働者なのですが、見た目からして貧相であると攻撃対象になりますからね。それが行き過ぎて筋肉愛となった訳ですが、彼の肉体は攻撃目的ではありませんでした。」
淡々と、それ自体が当然であるかのように語るダミアン。
次期宰相候補者達は、やっぱり皆が何処かおかしかった。変人=魔族ではないと思うが、己の欲望に忠実である事に違いはないのかもしれない。
そして強者であればある程、それが顕著に現れているのだ。
「弱肉強食は何処にでも付いて回るんだな。」
「強き者が全ての魔族です。見た目があぁなので、目的に反して物理攻撃には特化しておりますがね。」
再び歩みを始めた俺の後を、当たり前のようについてくるダミアン。
こいつも見た目だけは綺麗なので、魔族の中で何かと生き辛い部分もあるのだろう。
まぁ、同情はしないけどな。そうして生きる事が当然の世界なんだろうから。