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召喚魔王の俺  作者: まひる
第1章
12/248

1.魔王になりました─8

「大丈夫ですかっ、魔王様っ!」

 両肩を掴んでグラグラと頭を揺すられ、違う形で意識が遠退(とおの)きそうだった。

「やめい、ヘイツ次期宰相候補。少しソーマから、離れてもらおう。」

 いい加減頭にきたのか、インゴフが少しばかり強引に俺とダミアンを引き()がす。

 と言うより、俺からダミアンを()がす感じだな。


「意識はあるか?ソーマよ。」

「あぁ…、何とかな…。」

 毛むくじゃらの腕に乗せられ、不格好に仰向けになっている俺。

 下からは何故か、殺気だっているダミアンの気配がする。


「ともかく。ソーマよ。お前さんが、次期魔王様じゃ。細やかな説明は、記憶の継承と共に、渡される。」

 再び淡々と、インゴフは俺に告げた。

 何だかもう、反対も選択も、全てが遅いらしい。

「気に食わないけど、もう決まってるんだろ?選べないなら良いや。とりあえずは、マオウとやらになってやる。その後は俺の好きにさせてもらうけどな。」

 インゴフの腕の上で半身を起こすと、俺は承諾した。

 ごねても変わらないのであれば、後で自分が都合の良いように動くまでである。


「では、認証の儀を、()(おこな)う。」

 声高にインゴフが告げると、突然背後が明るくなった。

 お…、何て言うか…、凄いな。

 これしか感想は出なかったが、俺の視界に映った光景は、まるでゲームの世界である。


 ずっとそこにいたのだろうが、インゴフよりも巨大な肉塊が奥にあった。黒い毛皮に包まれた巨躯は、微かに胸部を上下させている。

 大きすぎて全貌は見えない。だがその生命の力が、とてもか細いものなのだと、肌で感じた。


「ソーマよ。ここに。」

 インゴフに指示され、そのデカ物の近くに立たされる。

 と、ここで気付いたが、足下には淡く緑色に光る紋様があった。

 まるで魔法陣のようだ─と思った時、何やら聞き取れない言葉を紡ぎ始めていたインゴフの身体も、紋様と同色に光り出す。

 次に俺と、黒い肉塊までも。


「っう…?」

 困惑していた俺の頭に、今度は高速再生の映像が流れ始めた。

 言うなれば、録画再生の四倍速か…それ以上。


 それは、俺が俺の世界にあった時から始まる。

 自分の身に起こった出来事を、他者目線で映画のように観た。

 ドキュメンタリー番組のように…。

 歩道を歩く俺、横断歩道を渡る小学生。突進してくる大型車、飛び出す俺。少年の腕を引き、俺が横断歩道に出る。

 うん、記憶通りだよな。


 そして勢いを殺す事なく、俺にぶつかる大型車。へこむ肉体と車体。弾き飛ばされ、アスファルトに叩き付けられ、跳ねる身体。赤黒く染まる周囲。


 あぁ…何か、気分悪くなってきた。


誤字訂正(3/13)

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