6.魔王は試作試行役ですか─4
魔道具の試行実験の為、魔王城の地下鍛練場を使用する事にした。
ここならば最悪暴発したとしても、結界が強固だから大丈夫だろう。──それでも心配だから、更に俺の風魔法でこっそりと風壁をかけておいたがな。
「よし、やるか。」
「本当に試行役をなされるのですか、魔王様。わたくしは未だに賛成しかねるのですけれども。」
コンラートから渡された掌サイズの青い石を握り締めた俺に、鍛練場の端からダミアンが渋りながら声を掛けてくる。
先程からずっとこの調子の為、いい加減鬱陶しくなってきていた。
「何だ、ダミアン。俺の魔力に不安があるのか?」
「いえいえ、滅相もございません!魔王様の御力は我が身に受けております故、疑う余地などないのは明らかです。わたくしが心配しておりますのはコンラートの魔道具でございます。」
焦った表情で何度も首を横に振るダミアン。
彼とは実際にここで手合わせをした事があるから、俺が全属性持ちである事を知られている。
「発動魔法自体は水だろ?」
「左様に御座りまする。これが正式に魔道具として認められれば、誰でも木々に潤いを与えられまする。」
確認するようにコンラートに問えば、自信満々にズレた答えが返ってきた。
──何だよ、植物の水やり目的かよ。
少しばかり見当違いなコンラートの考えだったが、属性違いの魔法を使える事に損はないだろう。
「植物はどうであれ、一先ずやってみる。」
視線で二人に距離を取るように伝え、俺は掌に僅かな火魔力を込めてみた。水魔力で水魔法が発動するのは当たり前だから、わざと逆の性質を選択したのである。
だが魔道具は、俺の意思に反して魔力を吸収しようとしてきた。
「おい、コンラート。吸い取られる感があるぞ?」
「何ですと?失礼ですが、魔王様はどの属性魔力を御使いになられたのか御伺いしても宜しいですか。」
コンラートは手に羊皮紙を持ち、試行結果をつぶさに書き留めようとしている。
その姿勢には感心するのだが。
「構わない。火魔力だ。」
「相反する魔力に、魔道具が吸収の反応を見せたのですかな。」
フムフムと頷きながら書き記すコンラートは、俺の状態が見えていないようだった。
現時点では全く問題ないが、初めに込めようとした魔力の数十倍は魔道具に吸収されている。
確かにこれは、使用者の魔力調整を無視しているな。魔力容量の小さな魔族なら、あっという間に枯渇するだろうスピードだ。
ちなみに俺の意識的には、既に供給をストップしているのにも関わらずである。