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召喚魔王の俺  作者: まひる
第2章
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6.魔王は試作試行役ですか─2


「ここは…何だ。少し装飾が特殊だな。」

「そうですね。少しばかり他とは違った装いをしておりますが、正しく彼の執務室にございます。」

 顔がひきつりそうになる俺に、ダミアンは小さく頷きながらも胸に手を当てる。

 今、目の前にある濃い紫の扉。何故か髑髏(しゃれこうべ)をそこかしこにトッピングしたその外観は、ここで魔女が黒魔術の実験をしていますといわんばかりの雰囲気を(かも)し出していた。


 若干引き気味の俺だったが、ダミアンは普通にその扉を叩く。

「…はい。」

「コンラートはいますか。」

「…はい。どうぞ…。」

 フードを被った小さな男がダミアンにボソボソと小声で応じ、扉を大きく開けた。だが一歩中に足を踏み入れた俺は、思わず息を呑む。

 何故ならば目の前に広がる光景が、あまりにも予想外と言うか予想通りと言うか。

 中身に生物の一部分が入ったガラスのビンが幾つも並び、棚と(おぼ)しき場所には大きさも色も様々な骨らしき棒状の品が雑多に押し込められている。

 その横の棚には複数の液体。他にも、見た目では素材が分からないような物で(あふ)れていたからだ。


「…これはこれは、魔王様。わざわざ御越しいただき、誠に感謝致しまする。」

 なかなか入ってこない俺に痺れを切らしたのか、奥から茶髪短髪の筋肉質男が顔を出す。

 コンラート・ルティン・ケルナ、次期宰相候補者の一人だ。

「コンラート。これは何だ?」

 俺はそれらを一括(ひとくく)りにして問う。

 仮に一つ一つを○○の△△だ等と説明されても困るからだ。

「はい。それらは素材で御座りまする。」

「魔道具のか?」

 俺は魔王知識から、彼がルティンの一族である事を知っている。

 ()の一族は鬼族修羅種という珍しい種族であり、巨人種に匹敵する身体の頑丈さと他の鬼族にない魔力干渉能力があるのだ。

「左様に御座りまする。私の作り上げる魔道具には、様々な素材が必要になります(ゆえ)。詳しくは奥にて御説明致しまする。」

 そうして、棚の裏側にあるらしき一つの空間へ案内される。


 奥には簡素ではあるがテーブルとソファーが置かれ、それなりに応接室の様子だった。フード小男がカーテンを開けると日が射し込み、その部分だけ立派に執務室としての見てくれを取り戻す。

 周囲の棚には研究資料か書類か不明だが、様々な羊皮紙が押し込められていた。要整頓である。

「それで?」

 俺は勧められたソファーに腰を下ろし、コンラートに続きを促す。


 そして周囲を一通り見回している間にテーブルに置かれていた、フード小男が淹れたと思われる何かの液体が入ったカップへ視線を落とした。

──何故これは、不自然に泡が涌き出てくるんだ?炭酸飲料には見えないし。

 赤紫の液体からは、コプリコプリと大きめの気泡が出てきていた。

 俺はその不気味な液体から視線を()らし、見ない事にする。

 いくら魔王になったとはいえ、人であった頃の常識から逸脱した物を口にする気にはなれないだろ。


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