5.魔王を誘惑してはいけません─9
「蒼真がぁ、わっちと良い事してくれたら変わるかもよぉ?「魔力の消費になるからぁ」気配を消す事も出来るかもしれないしぃ?」
クネクネと身体を動かし、その豊満な胸を強調する二人のミカエラ。
またこれだ。魔力のコントロールが出来ない俺が悪いのか、俺を誘惑するミカエラが悪いのか。
「あのなぁ。魔力のコントロールが出来なくて押し潰されそうになってる訳でも、ましてや気が狂れそうになっている訳でもないんだ。何しにそっち側で発散しなくてはならんのだ。」
相変わらずの話の振り方に、俺は大きく溜め息をついた。
ミカエラは事あるごとに、性的な発散を求めてくる。ダミアンじゃあるまいし、ところ構わずヤってられるかっての。
「んもぅ、蒼真ってば「少しくらい良いじゃないのぉ」減るものじゃあるまいしぃ。」
二人して唇の下に指を当て、身体をくねらせながらもう片方の腕を胸の下に回しを持ち上げるように見せた。
もう目頭を押さえていないが、ミカエラと二人っきりが怖いな。フランツとは違うが同系統の接触をしてくるミカエラに、コイツ等は明らかに同族だと確信する。
「断る。減るだろ、確実に色々と俺の中で削れる。ったく…ミカエラも魔力が発散したいなら、違う方法で消費しろ。必要以上俺に構うな。」
こめかみを揉みながら、俺は頭痛をやり過ごす。
ダメだな。こんなんじゃ、宰相なんかにしたら俺の身が危ない。
「魔王様。ミカエラとの会談にあまり良い成果がでないようなので、ここはコンラートを御覧になられた方が宜しいかと思われます。」
控え目にではあるが、定位置の斜め左後ろからダミアンが告げた。
暗に時間の無駄でしょうと、ダミアンの心の声が聞こえるのは気のせいか。
だが、実際にこれ以上どうしょうもない──いや待て、そうだろうか?すっかり忘れていたが、俺には闇魔法の闇影があるじゃないか。あれは立派に隠密用だぞ。
「そうだな。俺自身がミカエラに同行出来ないのは悔しいが、邪魔をするつもりはない。ここは俺の影を連れて行ってもらうか。」
「影、ですか?」
「蒼真のぉ?」
「あぁ。」
俺の言葉に、ダミアンとミカエラの不思議そうな声が揃った。そして俺はニヤリと笑みを返す。
隠密行動専門の、尚且つ攻撃転用可能な影である。
勿論見聞き可能で、大きさや形を俺のイメージで変えられる優れものだ。
ってか、初めからこれを皆につけとけば──なんて今更だからな?
俺はコソコソとではなく、堂々と観察したいんだ。情報だけを知るなら、観察なんて必要ないからな。うん。