表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚魔王の俺  作者: まひる
第2章
106/248

5.魔王を誘惑してはいけません─2


「ミカエラの執務室はこちらにございます。」

 (うやうや)しく胸に手を当て、頭を下げるダミアンである。だが先程のテンションが残っているのか、頬が少し赤みを帯びている。

 コイツの一人絶頂に付き合っていたら俺の精神衛生上問題が出る為、その辺りは華麗にスルーさせてもらおう。


 俺が頷いた事を確認すると、ダミアンがその扉をノックする。

「はぁ~い。だぁれ?」

 間延びした返答と共に内側から扉が開けられた。金髪ウェーブがフワリと揺れ、花の匂いが辺りに拡がる。

 魔族にも香水があるんだなとか、見えたミカエラの服が相変わらず水商売のねぇちゃんだなとか。俺の感想はその一瞬で脳内に浮かんだもの。

 だが次の瞬間、俺の感覚は柔らかく温かなものに覆い尽くされていたのだ。


「ちょっ!ミカエラ、魔王様を放しなさいっ!」

「嫌よぉ。蒼真(そうま)ってば、最近本当に顔を見せてくれなかったんだもん。」

 ダミアンとミカエラの押し問答が微かに聞こえるが、俺を拘束する力は緩まるどころか強くなる一方である。

 つまりは俺、マシュマロに顔だけではなく頭ごと埋められているのだ。─死ぬ。


 完全に呼吸を奪われ、手の自由すらもない俺。そのうち外部の音すら聞こえなくなってくる。

 いよいよヤバい。

 そう思った時、俺の身体から黒い(もや)が沸き立ってきた。

「魔王様っ!」

「うきゃっ!!」

 ダミアンとミカエラの声の後に激しく己の肉体が揺さぶられた感じがして、同時に勢い良く気管に空気が入ってくる。


「ゴホゴホ…ッ、ゴホゴホゴホ…ッ、ゲホゴホ…ッ!」

 ()せた。それも盛大にである。

「~…っ。」

「大丈夫ですか、魔王様。」

 何とか呼吸が落ち着いた頃合いで、タイミングを見計らっていたようにダミアンが静かに問い掛けてきた。それまでは俺の背を撫でてくれていたのである。

 本当にコイツ、普段は物凄く空気を読むのが(うま)い。

「あぁ…、何とか、な。」

 酷く咳き込んだせいで滲んだ涙を指先で拭い、改めて状況を確認した。


 何故か先程俺が立っていた筈の床が、高濃度の塩酸でも振り掛けたかのように溶けている。

 何だ、これ。…まさかとは思うが、俺の闇魔力か?

「さようでございます。」

「マジか。」

 視線をダミアンに向けると、俺の心の問いに答えてくれた。

 思わず()で呟いちまったぜ。

 ってか無意識とはいえ、この力をミカエラに向けようとしていたって事で。


「魔王様に非はございません。ミカエラが悪いのでございます。」

 俺の顔色が悪くなったのを(いち)早く察したダミアンは、静かに微笑みを浮かべてみせる。


 何だよ…。何かちょっと気にくわない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ