4.魔王が仲介します─7
やって来ました、竜族の里。
鬼族鴉天狗種の長には勿論、この件の話をつけてある。バカ息子の再教育という名目で、竜族の里に出向だってな。
「魔王様。父様が来た。」
アルフォシーナの声に視線を向ければ、前方から巨大な青い竜が飛んできていた。その大きさ、優に30メートル。ビルの8階程のサイズである。
近くに来て漸く分かるが、青みの強い銀色だ。素直に綺麗な色だと思う。
「ようこそおいでくださいました、魔王様。改めまして、わたくしはフラヴィアーノ・マルクス・マッフェイと申します。先日は竜形態であった為、本日はこちらの姿で御挨拶させていただきます。」
大地に降り立つと同時に、人形に形態を変化させた。青空のような色の肩までの長さのサラサラストレートヘアを無造作に横で一縛りにし、簡素な鎧に身を包んだ長身の男である。
額にアルフォシーナと同じ一本角を持ち、切れ長の瞳は真っ直ぐ俺に向けられていた。
「面倒事を頼んで済まない。」
「いいえ。…この者等ですか?」
フラヴィアーノは表面上はニコヤカだが、3人組に向ける視線は射るようである。
アルフォシーナにケンカを吹っ掛けている事は知っているのか、父親としての複雑な感情があるのかもしれない。
俺は逃げ腰の3人組から、闇魔力で作り出した闇影を解除する。大きな影人間に一纏めで掴まれていた3人組は、地面に下ろされてもガタガタと不格好に震えていた。
まぁ、ここまで来て逃げる事も出来ないだろ。
「お前等。この竜族の里は、他の大地よりも大気中の魔力量が多い。その少ない脳ミソに詰められるだけ詰めておけ。」
理解しているのかは不明だが、3人組は震えるだけ。それでも俺は、何度も言い聞かせてやる必要もないだろうと軽く溜め息をつく。
「こちら側の鍛練で宜しいのですね?」
「あぁ、それで頼みたい 。鬼族鴉天狗種ではコイツ等を鍛えきれなかったようだからな。」
含んだようなフラヴィアーノの問い掛けにも、俺は事も無げに答えた。
意訳すると、同族では諌められないとなる。
「畏まりました。竜形態の鍛練は無理でしょうから、人形での特別鍛練といたしましょう。」
フラヴィアーノはとても良い笑顔をみせる。
特別鍛練─果たしてどのようなものか。
至極興味があったが、今の俺の第一優先懸案は宰相の決定だ。その為にアルフォシーナは勿論、他の二人の魔族柄も見極めなくてはならない。
「頼んだぞ、フラヴィアーノ。」
「御意に。」
胸に手を当てて頭をたれたフラヴィアーノ。
これで少しは見られる3人組になるだろう。まぁ、期待は全くしてないけどな。