4.魔王が仲介します─6
「こ、コイツ…魔力封じが効かない、のか?」
「バカなの?魔王様は封じの魔石なんて効かないのよ。あたし達魔族の頂点たる存在の魔王様に、鬼族鴉天狗種封じが与えるのは軽い圧迫感くらいじゃないかしら。」
鴉人間の言葉に、アルフォシーナが鼻であしらう。
まぁ、言っている事に間違いは殆どない。
「くっ…、このままじゃ俺等が不利だ。封じの魔石を止めろ。」
「いや、奪われないように手元に持ってないから今は無理だっ。」
焦ったように嘴と鴉人間が言い合っていた。
情報駄々もれなんだが、こんなんで良いのか鬼族鴉天狗種。
「頭が足りなさすぎるな。策略は慎重に細部まで詰めないとダメだろ。」
思わず溜め息をつきそうになるが、威圧が解けてしまうのは拙いと気を引き締める。意図した訳ではなく視線が鋭くなり、増した魔力に当てられて鴉人間の顔がひきつった。
ちなみに今の俺の魔力は、通常時の三割程度抑えられた状態である。それにこの程度の魔力封じでは、上位の鬼族鴉天狗種なら100%の封印は難しいと思われた。
「アルフォシーナ。どの程度余力がある?」
「ん。半分程度。」
「だよなぁ。これ、封じの使用者によって効果が変わるのか?」
「そうかも。普通は長がやる。アイツが長の末っ子だから、言いくるめて持ってきたんじゃないかと思う。」
ぐうの音も出ない嘴と鴉人間を見て、アルフォシーナが嘴の方を指差す。
長の子がこの程度の能力なのかと一瞬頭を過ったが、能力が確実に遺伝する訳ではないのだ。
─社長の息子が使えないとか、良くある話だしな。
だがその不出来な息子に対し、どのような教育を施したかが問題になる。まぁ、見たところ放任されているようだが。
「アルフォシーナはどうしたい?」
「魔王様を愚弄したから、処罰を与えるべき。」
視線を向けて問えば、アルフォシーナは表情も変えずに言い切った。
処罰、ねぇ。この魔力の低さでは少しばかり酷かもしれないが、その身で感じてもらった方が良さそうだしな。
「分かった。じゃあ、アルフォシーナの父さんに会いに行こうか。」
「良いけど…、何で?」
「竜族との橋渡し役にな。」
俺の言葉にキョトンと目を丸くするアルフォシーナだったが、続けられた答えにニコッと微笑んだ。逆に三バカ残る二人の方は息を呑んだが。
中々珍しい物を見られたな。普段表情が欠落してるから、彼女の笑顔は破壊力抜群なのだ。
惚れるなよ、バカ共。