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第六:無敵VS無双 Part??



「俺だけ違う学校か……」


 小学校の卒業式。 当たり前の如く慣れないピシッとしたスーツの類を着た茶色の髪を持つ少年は、卒業証書が入った筒でポンポンと、肩を叩きながら苦笑でそういって見せた。

 そんな彼の言葉に目の前の、最近流行の魔力感染症でも珍しい、雪のような白い髪を背中辺りまで伸ばした少年が、同じような表情をして答えた。


「まぁ、魔術って言うのは、まだ色々と不明なものも多いからな。 むしろ、俺は俺はうらやましいぜ」

「そうそう。 あ〜あ……私も行きたかったな〜」

 

 続いてどこか不機嫌そうに答えたのは、少しウェーブのかかった亜麻色の長い髪の毛と、小動物のような目の癖に、猛禽類のような鋭さを感じる栗色の両目が印象的な少女だった。

 彼女も卒業式のため正装である。 もちろん、隣の白髪の少年も(というか、白い髪と対称的な黒色の正装は、なんだか喪服のようにも見える)。

 

「へっ、そうだな! 魔術は基本、魔法学園のみの秘密事項だ! お前らとは違う世界を見にいってやるさ!」

「も〜、ずる〜い〜!」


 へへっ! っと笑ってみせる茶髪の少年。 その顔に少女は、む〜っ! と、プンスカと冗談半分に茶髪の少年をポカポカと殴り始めた。 その行動が可笑しかったのか、彼は頭を抱えながらも笑いながらそれを受け止めている。 確かに可笑しい。 とても日常的で、なんだか見て和める程微笑ましい光景だ。


「…………………………」


 だが、白髪の少年は笑わなかった。 笑えなかった。 この光景の違和感。 あんなに楽しそうなのに、どこか辛そうな、茶髪の少年の『何か』。 そう。

 白髪の少年は気付いていたのだ。 彼の気持ちに。

 きっと彼は、自分たちと違う学校へ行くことになることが、悲しいのだろう。 それなのに笑っているのだろう。 きっと彼は、彼は寂しいのだろう。 なのに楽しいふりをしているのだろう。

 彼がそうしているのはおそらく。 いや、間違いなく、自分たちに心配させないため。 しかし、やっぱり無理があるのだろう。



 だってほら、悲しい表情(かお)が出てる。



 角度的に彼女に見えないのはある意味不幸中の幸いだろう。 だが、彼女は勘が良い。 すぐに気付くだろう。 

 だから、その前に……。

 白髪の少年はバッと無理やり茶髪の少年の腕を引いた。 


「おい、少し顔貸せ」

「え? お、おい! ちょ、いてぇって!」

「ど、どうしたの!?」


 二人とも当然驚いた顔をしたが、無視してそのまま校舎裏へと連れて行く。 は日陰になっている。 木もたくさん植えてあるため他の人間には見えないだろう。

 ちょうどついた時に茶髪の少年は白髪の少年の腕は振り払った。 だが、その顔には安堵と、申し訳ないと語っているかのような。表情に満ちている。


「悪い……」


 ここに呼び出された意味は自分で解っているのか、最初の言葉はそれだった。


「いや、こっちもいきなりで悪かったと思ってる」

「いいさ。 ……それよりも、やっぱ顔に出てたか?」

「あぁ……なぁ、やっぱりお前…………」

「言うな。 それにしても、お前に隠し事できないのは最初っから最後までだったな……」


 白髪の少年の言葉を静かにさえぎってから、茶髪の少年は呆れたような、というよりは、まいったというような笑みを浮かべる。 

 

「俺さ、お前もだろうけど………………やっぱ俺、あいつのこと、好きなんだわ」

「あぁ……」


 彼の言葉に頷くしかない。 悲しみをまだ知らない少年は、彼がどういう思いで自分に話しているかを理解し切れていない。 だけど、辛いのだろうというのは伝わったので真摯に受け止めることは出来た。


「だけど、俺はお前らとは違う学校に行く。 魔立の学校は全寮制だから、しばらくはお前とも、あいつとも会えなくなる。 だからよ……」

「…………………………」


 喜怒哀楽に満ちた茶髪の少年とは違い、この少年は悲しみを知らない。 だけど、辛さは知っている。

 今の自分が出来る彼の今の気持ちに対する解釈は、自分と彼女と共にはぐれるのが辛い。 特に彼女とはぐれてしまうことに関しては、胸が締め付けられるのに近い衝動にかけられているのだろう。

 彼のこの気持ちを近いすることは出来ない。 だけど、彼のこの気持ちを受け取ることは出来る。

 茶髪の少年は白髪の少年をまっすぐに見る。 向き直る。 そして、告げる。


「雪奈。 お前に、理紗を『託す』。 何が何でも、あいつを守っていてくれ……!」



今回は少し早めに更新できました!やった♪


えっと、今回のお話は、解りましたでしょうか?

これを見た人は、一応解っていると思うので、言いますが、今回のお話は、雪奈と吉良の過去のお話。そして、俺のもう一つの作品。『哀をください』よりちょっと前のお話となっております。


ちなみに、このお話は、最初もっと後に作る予定でした(第六の最後あたり)。だけど、そろそろ吉良の魔法名の理由を公開しておこうかな〜。なんて思ったので今回この話を投稿しました。


次回の更新も出来れば、今回くらい早く(いや遅いけどw)投稿したいと思います!


それでは、今回はこの辺で。

皆様の、感想、評価、アドバイスをお待ちしております!



あ、ボイスブログをやっているので、もし良かったら遊びに来てください→http://www.voiceblog.jp/night-lock/

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