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第六:無敵VS無双 Part7



「……何だ、これは…………?」


 学園最強の一人、吉良黄泉乃は目の前の、異例で、異質で異観で異常で異形で異様な異物に、唖然とするしかなかった。

 吉良は、魔術に関しては、戦闘技術だけでなく、教師にも負けないくらいの知識を持っている。 しかし、目の前の現象に関しては見たことはもちろん、触れたことも、聞いたこともない。

 そして、目の前の『それ』が、頭部の二つの『目』を赤く光らせ、動き出した。


「ギュォアオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」


 天に向かって、巨大な氷の龍が吠える。 その衝撃に吉良の全身の筋肉がいきなりドライアイスをぶち込まれたかのように固った。

 最強であるはずの彼がこのようになってしまうほどのものを、ギャラリーから見ている人間たちは、今この光景を目にどう思っているのだろうかと吉良は考えた。

 こんな未知の現象から生まれた未知の物に、何かが心から体全身を駆け巡る。 恐怖ではない。 相手は、姿形は違えど、旧友であるあの戸塚雪奈には、違いないのだから。 そのくらいの冷静さと理解力を、学園の頂に立つ彼は持っている。

 どちらかというと、こみ上げてきた感情は…………そう、怒りに近いものだった。


「戸塚……てめぇはそんな姿になってまで、自分がしちまったことから目を背けてぇのか?」


 俯いたままギリィッ……と、吉良は歯を食いしばり、拳を握った。


「てめぇ……どこまで堕ちれば……どこまで腐れば気が済むんだ、ボケがあああああああああああああああああああああああ!!!!」


 感情をむき出した咆哮と共に、両掌を合わせる。 

 その行為は、言うまでも無く彼の魔術発動の合図。 再び彼の背中に白と黒の二対の翼が生え、空気を叩き、氷龍の頭くらいの高さまで飛び上がる。


「さっさとめぇ覚ませ。 そんで、理紗ん所に戻れ!」


 再び合わされる掌。 それによって生まれるのは、四本の光る柱。 否、プラズマの竜巻。 それが一斉に、まるで得物に襲い掛かるハイエナのように氷龍へと襲い掛かる。

 しかし、


「ギュアオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

「なッ!!?」


 咆哮。 それだけで、プラズマの竜巻がザアァ……と、強力な風に吹かれた巨大な砂山のように全てかき消された。

 当然、今の龍のそれは、単なる叫び声じゃない。 莫大な量の魔力を注ぎ込んだ衝撃破だ。 だがそれだけでは、今起こった現実は説明しきれない。


「うそ……だろ……!?」


 吉良でさえ、ただ驚くことしか出来ない。 だが、すぐに感情をコントロールして、他の手を考える。


「ギャオオオアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

「ッ!!?」


 その途中、再び放たれる咆哮と共にすさまじい勢いで振り回される腕に、吉良は反応が遅れた。

 速い。

 避けられないと確信し、吉良は掌を合わせ、空気の壁を作り、これを防ぐ。 しかし……


「な……にぃ……!?」


 龍の腕はその空気の壁を吉良もろとも殴り飛ばした。 空気の壁がまるで風船のように一瞬で弾け飛び、吉良の体も魔力防壁へと衝突する。


「がっ、はぁ……!?」


 強力な衝撃に内臓を圧迫され、壁に衝突したときの痛みは、もはや例えられるようなものではなかった。 強力な吐き気はいたっては、地面に落ちたときに耐えられず文字通りの血反吐を吐いてしまう。

 

(何だ、今のは……? 『ただ腕を振り回した』だけで、俺の防御壁だけでなく、俺自身にまで攻撃を与えただと?)


 ありえない。 吉良の作った壁は、単なる物理攻撃で破壊されるような魔術ではない。 それどころか、魔術による攻撃だって、大抵のものは防げるもののはずだ。


(それが……あの程度の攻撃で…………っ! ふざけんな……ふっざけんなああああああああああああああああああ!!!)


 たとえ目の前のものが怪物であろうと無かろうと、それが吉良のプライドを傷つけた事に変わりは無い。 それ故吉良は、自身の燃え上がるような怒りを感じる冷静ささえ失っていた。

 パァン! と掌が合わさる音。 そしてその手を地面にたたきつけた。


「こい! シルフィード!!!」


 その行動と彼の声に反応するかのように、同時に幾何学的な文様が地面に浮かんだ。 それは、『召喚魔術』でとあるものを『召喚』するために吉良が最初から作っておいた魔陣だった。

 『召喚魔術』。

 文字通りというべきか、この場にないものを別の場からここへ移す、一種の『移動魔術』の事だ。

 しかし、普通の移動魔術とは違い、今のように魔陣が必要なのだが、吉良はそれを頭の中で全て構成し、魔術によってそれら全てを地面に描いたのだ。

 生まれたばかりのそれが、すさまじい光を発すると、魔法を知るものならでは常識の、『ありえないが、ありえる生物』が、まるでホログラムビジョンのように出現した。

 今にも飛び掛りそうな体勢で出現したそれは(いたち)。 だが、モチロンただの鼬じゃない。 前後の足に生えた爪は恐ろしく鋭く強靭で、長い尾の先は90度曲がり、毛が高質化して構成されたのであろう、巨大な鈍色の鎌が出来ている。 大きさに関しては、頭から尻尾を含めると裕に3メートルを超えそうだ。 その姿はまるで東洋の妖怪、『鎌鼬』。

 名をシルフィードと言う。 それは、吉良が鼬を媒介にして作られたキメラの名前。 西洋の大精霊の名前に恥じない戦闘能力を持ち、尻尾の鎌は、10センチほどの鉄板をも斬り捨て、さらに吉良と同等、またはそれ以上の魔術もこなす。 まさに吉良の『切り札』というわけだ。

 

(あまり使いたくはなかったんだが……そうは言ってらんねぇ……)


 吉良はシルフィードを従えながら翼を羽ばたかせる。 これで、一気にケリをつける。



よかった……やっと更新できた……。


ごめんなさい……待っていた人、いたら本当にゴメンナサイ……。


今回はラストスパートその一ですね。ハァ……斐川の話よりもはるかに長いとか……。


実は、この作品にはヒロインがいます……いや、むしろ何でいねぇんだよとねw

つまり、この作品には、まだヒロインすら登場していません。(なんちゅうこったw)


次のお話(第七のこと)はヒロイン登場か、他校編か…………あれ?前もこんな話したような……。



現在、ボイスブログをやっております。

URLは貼っておきますので、お暇があれば、遊びに来てください→http://www.voiceblog.jp/night-lock/



では今回はこの辺で、皆様の感想、評価、質問、アドバイスなどをお待ちしております!

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