第六:無敵VS無双 Part6
視界がぼやける……全身が痛い……。 ほぼ大の字になった状態で闘技場の天井を見上げている雪奈は、意外と冷静にそう心の中で呟いた。
四本の光の竜巻に飲まれた雪奈は、全身を焼かれ切り裂かれついには地面に叩きのめされ、いまやもう、起き上がる気力も体力も、正直に言って残ってない。
(俺の、負け……か……)
不思議だ。 負けたのに全く悔しくない。 いや、そもそも、自分は勝ちたいなんてこと思っていたか? それ以前に、自分は何故戦っていた? 篠原葉月を自分の委員会に入れるためだ。 だが、それは夕凪が望んだことであって、自分が望んだことではない。
バカみたいだ。 これじゃあ、勝てなかったのなんて当たり前じゃないか。 そういえば、あの時は何故勝てたのだろう?
(そうか……コレが信念か……)
あの時は、単なる実力試しで、ただ吉良が雪奈のお互いに特に信念がなかった。 実力は拮抗していて、ただ、ちょっとした偶然で雪奈が勝ったのだ。
(そういえば、どうやって勝ったんだか……)
勝った方法すらも思い出せない。 そんなだから、自分は負けるのだろうか? ホント……本当に……バカバカしい…………。
「戸塚ぁ……お前はよぉ……こんなもんじゃなかったはずだよなぁ…………?」
ギャリッという、氷でも踏んで砕いたかのような音と共に、冷たく聞こえる少年の声。 それの主が誰かなのかは、確かめるまでもなかった。
「墜ちたなぁ……堕ちたなぁ……落ちたなぁ! オイ、戸塚。 今のお前最っ高に情けないわ」
「……………………」
吉良の罵倒するその声に、雪奈はこれといった感想は抱かない。 しかし、そんな冷静さも、次の言葉で打ち砕かされる。
「そんなんだからお前は理紗を守ることが出来なかったんだよ!!」
「ッ!!?」
彼が口にした少女の名前を雪奈が耳にしたとき、ピシッ! という、何かの音が彼の中で聞こえた。 本来無表情の彼が出すことは無い、動揺した表情をみせた雪奈に、吉良は続けた。
「俺が今の理紗の様態を知らないと思ったか? 理紗は事故のショックで記憶が喪失ではなく破壊され、今あいつは病院生活を送っているんだろう? だからてめぇはここでアイツの記憶を取り戻すための魔法をここで手に入れようとしているんだろ?」
「………………」
雪奈は答えない。
それは、それが事実だからだ。 吉良の言う、理紗。 それは、雪奈にとって鬱陶しくも、腹立たしくも、そして、愛おしくもある少女の名前だった。
あの時の傷は自分の体にも、心にも、脳裏にも鮮明に残っている。 忘れるものか。 彼女が事故のショックで自分のことを忘れてしまったときの衝動も、また同様。
「だからなんだ……俺は、アイツをそうしてしまったからこそ、罪を償い、あいつの記憶を取り戻そうとしているだけだ。 文句あるか」
「文句あるに決まってんだろうが! てめぇのしていることは、ガキがおねしょの痕をごまかす様なものと同じなんだよ!!」
「ッ! 違う!! ぐっ!!?」
激情相手に殴りかかる勢いで起き上がろうとしたが、何時の間に近くまで来てたのか、吉良に即座に肩を踏み付けられ体が地面に束縛される。 起き上がろうとするも吉良の足はまるで深く刺さった杭のように動かない。
「てめぇは自分が理紗にしちまったことを無かったことにしてぇんだ……責任から逃れてぇんだよ」
「う……あぁ…………!」
目を伏せて歯を食いしばって唸る。 それは、違うと言えない自分が情けなく、悔しく、すべてを拒絶したいという、彼の感情表現だった。
違う……ちがう……チガウ!! そんなんじゃない……っ! 俺は、そんな…………違う、違うんだ!!!!!
「う……うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
突如、雪奈の絶叫が響き渡った。 それは、何もかもを遮断するはずの魔力の障壁の先を越え、観客の心をも驚愕させた。
「っ!?」
思わず、吉良も身を引いてしまう。 しかし、それは目の前の敵が放った咆哮に対してではない。 そんなもので、学園最強の一人である彼は退かない。
彼が退いた原因は、雪奈の魔力だ。 絶叫と共に放たれたそれは、強力ではなく凶力で、強靭ではなく凶靭な大いなる物だった。
そして、
雪奈の体が、凍り始めだした。
否、彼の体を、氷が覆い始めているのだ。
そしてそれは、雪奈の体を覆うだけじゃおさまらず、一定の形を模りながら、徐々に体積、質量を増やしていく。
最終的に出来上がったのは、巨大な氷山。 いや違う。 それは、太い短めの足に、それとは対称的な細く長い腕があり、長く伸びる尻尾から頭部まで、全体的に爬虫類を思い出させるフォルムをし、背中に生える巨大な翼は、広げれば裕に10メートルは超えそうだった。 そして、それの氷の体の中で眠っているように動かない雪奈は、まるでコアのようにも見えた。
そう。 その姿はまさしく、比喩でもなんでもなく、『氷のドラゴン』だった。
「ねぇ、おにいさん……あんた何時になったら今月の更新をしてくれるんだい?」
「すいません大家さん。ちょっと、このあとの展開のことを考え中でして……」
「また、それかい!?……しょうがないね、一週間以内に更新するんだよ……?」
「は、はい!ありがとうございます!」
……なんだこれ? まぁ、おれの心境というか、最近の状況なのですが……。
えぇ、今回も一ヶ月かかってしまいましたよ。文章というか、構成自体は出来ていたのに、中詰めでいつも時間がかかってしまう。バカの代名詞、俺。
待ってくださっている人たちは本当にゴメンなさい!もっと努力して見せます!
さて、今回の雪奈の暴走。 彼はいったいどうなってしまうのか? 無敵VS無双の結果は意外な方向へ!?
次回を待ってください!(最後だけ敬語な件w)
では今回はこの辺で。
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