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第六:無敵VS無双 Part4


(なんなんだ……これは……)


 試合が始まって三分弱。 それが、篠原葉月のこの試合に対する感想だった。

 目の前で繰り広げられている戦闘があまりにも現実離れしていて、もはや香港映画のようなコメディにも見えてくる。


「すごいな……」


 隣で斐川がそう呟いた。 同時に、戸塚と吉良が氷の爪と螺旋の刃を振り回しながら交差するのが見えた。

 彼のほうを見てみると、斐川は目を大きく開いて、その試合の光景を凝視していた。 まるで、初めて夜空に咲き誇る花火を見た子供のように。 


「俺ではきっと届かないLEVEL7同士の戦闘。 ……なんか、あの二人が戦っている空間は、異世界にも感じるな」

「あぁ、確かにな」

「どんな感じなんだろうな、そこまで魔法を駆使して戦えるなんて気分は。 オレには想像も出来ないよ」

「………………」


 彼の口調は実に淡々としたものだった。 しかしだからこそ、たったこれだけの会話で、なんとなくだが、葉月は斐川の心境が解った気がした。

 彼は、葉月と比べれば、自分には魔術の才能は無いに等しいと感じているのだ。 彼は今もLEVEL1。 たった3年ちょっとで、目の前で戦っている戸塚雪奈や吉良黄泉乃みたいになれる自身が無いのだろう。 だから、『異世界』なんて、言葉が出てきたのではないだろうか。


「できなくて当然よ」


 綺麗で澄んだ、しかし冷たい声が隣から聞こえた。 声の主は斐川ではない。 彼とは反対の隣、神錠真理の声だ。 斐川と共に葉月はそちらを向く。


「あいつ等はね。 天才的な才能はもとより、血反吐吐くまで努力した、まさに化け物なの。 斐川君、LEVEL1でしょ?」

「っ!」


 斐川の目の色が変わった。 彼にとってコンプレックスである部分を触られたのだから、当然だ。


「君、委員会の間じゃ有名なのよ。 天才君に挑んだ無謀な凡才って、ね」


 ギリリッという音が小さく聞こえた。 斐川が歯噛みした音だと、葉月はすぐに気付いた。 思わず真理を睨む。


「やめろ! 必死になって努力している人間を、そんな風に言うな!」


 つい声が大きくなったが、ここは試合中の闘技場。 一人が騒いだ程度で、常に万人が騒いでいる中では、特に注目も集まることは無かった。

 真理は、虚空を見るような目つきで激戦を繰り広げるLEVEL7達を見ながら、


「努力どうこう以前に、スタートがLEVEL1の時点で、あいつらに並ぶことは、無理よ。 次元が違うの。 それと、話は変わるけど、篠原君。 君は恵まれてるのよ」

「恵まれてる?」

「そ。 うちの黄泉乃ものね、入学してきたときはLEVEL3(コモン)だったのよ。 その時は良いとして、アイツが、またあなたと同じように、年内でLEVEL4(ゴースト)になったの。 そのときの周りの反応、どうだったと思う?」

「?」


 思わずキョトンとして首を傾げてしまう。 斐川に目線を向けてみるが、彼もまたわからないと、首を軽く振った。 横目でそれを見ていた真理は小さく鼻で笑った。 しかし、馬鹿にしたようではなかった。 どちらかと言うと、何かを哀れんだような、そんな笑い方だった。


「答えはね、同級生には距離を置かれ、上級生には目をつけられるようになったの。 『化け物』としての扱いを受けてね。 酷かったわよ、あれは。

ある日ね、『一年の癖に生意気だ』とかそんな理由で上級生に、学園内でも普段誰も通らないようなところに連れて行かれて、一方的に魔術での猛攻を受けたの。 だけど黄泉乃は逆に、その5人はいた上級生達全員を半殺しにしたのよ。 どんだけよって話よね」


 クスッと、真理の顔から笑顔がもれた。 まるで、出来の悪い、だけど愛している弟の話をしている様に。


「それで、かなり危なかったところを、ギリギリで風紀委員会(うちら)が止めたんだけど……やめに入った時のあいつの私を見る目、今でも覚えてる。 今すぐ殺すぞって目だったな……というより、目に映るもの全部壊してやるって目だったのかな……」

「…………」


 葉月も斐川も、ただただ、その話を聞いていた。 いや、聞いていたと言うよりは、ゆっくりだが、冷たく、重く、低く語る真理に何も返す言葉が無かった。 だから、必然と全部聞く形になったのだ。

 真理はそこで深く息を吸い、


「わかった篠原君? 君は恵まれている。 才能だけじゃなくて、環境も、ね」

「…………」


 最後に子供諭す様な美しい微笑を見せた真理に対し、葉月は何も答えずに、二人の最強が交差し続けるその空間へと目線を戻した。

 だが、真理とは反対側の葉月の隣に座っている少年が、彼の視界の隅で俯いているのだけは、なんとなく、心に残った。




ちょこっと早めの投稿です。 試験明け記念ってやつです(内容が戦闘ではないのが悲しいですが)


とりあえず、ちょっとした行間です。 吉良の過去についてですね。 とりあえず大まかに書いたので、近いうちに本格的にキャラクター一人ひとりの過去の話を書こうと思っています。


次の投稿で戦闘を再開します。 そして急展開!!(まで行けるかな?)


さて、今回はこの辺で。皆様の感想、評価、アドバイスをお待ちしております!



現在、ボイスブログをやっております。

URLは貼っておきますので、お暇があれば、遊びに来てください→http://www.voiceblog.jp/night-lock/



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