第六:無敵VS無双 Part2
観客席にガラス張りされた魔力の障壁のせいで、観客のガヤは聞こえない。 そんな空間の中で、学園最強の二名が目を合わせあっているのは、檻の中の龍と虎が威嚇し合う光景と似ているだろう。
誰も近づきたくは、いや、近づけないような、近づいてはいけないような空気が、この二人を中心に溢れている。
『互いに、名を我が声に乗せてください』
雪奈の脳内に、そして吉良の脳内にも、魔術的通信法による女性の声が響く。 雪奈は一息ついてから、自分の名前と魔法名を思い浮かべた。 『FREEZER』。 意味は、凍て付かせる者。
(名は戸塚雪奈。 魔法名は『FREEZER』)
これを魔術的通信法の魔力に乗せる。 一時置いて吉良の名前が脳に浮び上がった。 そして直後、再び自分の脳内に彼の『もう一つの名前』が浮かんだ『T』、『R』、『U』、『S』、『T』、『E』、『R』。 合わせて『TRUSTER』 直訳すると、託す者。 未だにこの名の意味が解ったことはないが、自分が気にすることではなかった。 そんなことを考えていると、吉良が口を開いた。
「そういえば俺とお前がやるのって、実は二回目だよな。 そしてそん時の試合、俺は負けたっけな」
「………………」
雪奈は喋らない。 しかし、吉良はお構い無しに続ける。
「あの時、俺はプライドをずたずたにされて傷ついたよ。 なんせ今まで、自分がこの学園で一番だと思っていたからな」
「たかが一度の勝負で順位が決まるわけではないだろう」
「公式のはな。 だが、それを見た奴らなら皆が皆、お前のほうが上だって言うだろう。 テメェが一番。 俺が二番だってな」
「……もしそうだとして、そこまでお前は一番になりたいのか?」
「いんやぁ、実は俺はそんなのにはあんまこだわってねぇ。 正直、興味だってねぇ。 今回の試合も、別に俺はお前にどうしても勝ちたかったから出たわけじゃねぇ」
だがな、と吉良は続けた。
「お前に勝たなきゃいけない理由はあるんだわ」
「何?」
雪奈は眉を顰める。 吉良は気味が良いと言わんばかり表情を見せた。
「テメェと似ているよ、戸塚」
「吉良………………」
直後、互いが目の前の宿敵に、完全な敵意を、悪意を、戦意を向ける。 そして、吉良はパン! と両掌を合わせ、雪奈はピシィ! と左手の指を鳴らした。
それが彼らの魔術。 詠唱を必要としない、学園最強の肩書きを持つ彼らのみに許された、詠唱破棄だ。
瞬間、二人の背中に、異様なものが生えてくる。
それは翼。
しかし、向かい合う二人の翼はそれぞれまったくの逆の意味を持つものだった。
雪奈の背に生える翼はまるで、蝙蝠、ドラゴン、悪魔。 その全てに共通する、グライダーのような被膜を持った、巨大な二枚の氷の翼。 まさに、無敵の翼と呼ぶにふさわしいものだ。
それに対し、吉良の背に生える二対の翼は、上部の一対が白鳥、ペガサス、天使などに共通する神秘的な輝きを見せる純白の羽毛を持つ翼。 下部の一対が、鴉、天狗、堕天使、それら全てを思わせる漆黒の羽毛を持つ翼。 合計四枚の、無双の翼だ。
二人は自分の持つ翼を微かに揺らしながら睨み合う。 決戦まで、もう十秒もない。 そして、
「…………行くぞ」
「ハッ! 黄泉送りにしてやんよ!」
二種の翼が羽ばたく今、学園最強の二人が交差する。
ごめんなさい。
前々回あたりに、第六話のPart2で戦闘に入るといっていた俺ですが、ちょっとした都合により、次の更新でで戦闘に入ることにしました(だから今回は早め)。
えっとまぁ、吉良君が言っていたように、実は二人の試合は二回目なんですね(設定のモデルが垣根帝督と言っていたのはこのため)。これはちょっとした複線になっております(なっているかは置いておいて)。
あと、ちょっと早いですが、次の話(※第七話の事であり、次の投稿の話ではありません)は、彼らとは関係のない(いや、なくはないけど)話となる予定です。
それは、「魔立校他校編」です!
実は、設定資料の中ではもう一つの魔立の学校に通う、葉月とは違う主人公が存在しているのです!名前は………………………………まぁ、聞きたい人いたら言います。今はやめときますね(なんとなく)。
まぁ、性格は葉月とまったく違うキャラとなります。あと、一年生ではありません(このくらいならネタバレにはならないでしょう)。
では、今回はこの辺で。 皆様の感想、評価、アドバイスをお待ちしております!
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