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第五:対なる二つの組織 Part4


 あまりにもの光景に呆然とするしかない葉月。 吉良はそのまま叩かれた少女に蹴って仰向けにされ、さらに、胸倉をつかまれる。

 

「あんたねぇ、いきなり仕事をサボってどっかいったと思ったら!! いきなり魔術使ってるし! 何してんのよ! 何やっちゃってんのよ!! 何してくれちゃってるのよ!!! え!? もうこれはアレね、死刑ね。 私刑でもいいわ! とりあえず今すぐ委員会室に戻るわよ! いいわね!? ホラ、何とか言いなさい!!」


 物凄い早口で喋るまくる少女。 このやかましさに誰かを思い出す葉月だが、そんなものは頭の中で蹴飛ばしておく。 ただ、そんな口やかましさとは裏腹に、吉良の事を叩いた少女は、本来女性に関心を持たない葉月でさえドキッとしてしまうような美人だった。

 カーテンのようにかすかに揺れる夜空のごとく煌めくサラサラな漆黒の髪。 ちょっと吊り上ったダークブルーの大きな瞳。 全体的なスタイルも、誰もがうらやむ理想的なものであろう。

 服装は吉良と同じ、黒のアンダーウェアの上に茶色のブレザーを着、赤と黒のチェック柄のスカートという、シンプルながらも、それらは彼女の美しさを十分以上に際立たせていた。

 そんな彼女にガックンガックンと、まるで初めてロデオマシンにそれも一番強いレベルで乗った人間のように首を前後に揺らされている吉良は、


「のぅ! うぉ! ちょちょちょ! 真理(しんり)、さん! やめ……やめて、ちょ、しゃべ、れないから!」

「絶っ対やめない! 三日前の篠原葉月勧誘の時から仕事をサボりまくっちゃって……もう許さないわ、許せないわ、許されないわ!! あんたなんかミンチになるほど踏みつけまくって、その後東京湾の魚達の餌にしてあげるわ!」

「ひいいいいいい!!? なにそれすごくグロテスク!! 篠原君助けてくれ! 戸塚も今は一旦休戦! だからそっぽ向いてないで助けろ」

 

 先までの迫力はどこへ行ったのか、情けない声を上げながら助けを求めてきた。 なんだか本当にかわいそうなので、さすがに葉月も吉良を助けようとするが、


「え? 篠原葉月いるの!?」


 先ほど吉良に真理(しんり)と呼ばれ少女が驚いた表情をしてこちらを向いた。 自然的に葉月と目う。

 …………なんだろう、嫌な予感がする。 何故なら、真理はすでに吉良を離し(同時に吉良が頭を撃って悶える羽目になる)、誰も気付かぬ間に葉月の目の前に来ているのだから。

 

「ッ!?」


 いきなりの事につい身構えてしまう。 目の前のこの女から感じ取れる魔力、少なくともLEVEL5だ。 そして、先ほど吉良を殴った時まで感じられなかった気配。 只者ではないのは明らかだった。

 警戒心は絶対に解かない。 彼女の目を見てみる。 彼女もこちらから目線を一瞬たりとも外さない。 そして次の瞬間―


「かっわい〜〜〜〜!!!」


 物凄い勢いで葉月の体に抱きついた。 彼女の胸が葉月の顔面を覆い、呼吸をさせなくする。


(〜っ!?)

「すっごく可愛い、この子! え? この子が、篠原葉月なの!? うっそ〜……! 顔はモチロンだけど、このサラサラしてる青紫色の髪とか、生意気そうにちょっと釣り上がった赤目とか、すっごく可愛い〜っ!! この黒のロングコートとか、このこの可愛さを違う意味で際立たせて……もうたまんな〜い!!」


 ギュ〜ッ! と抱きしめる力を強くする真理。 そのせいで葉月の顔がさらに彼女の胸に埋まってしまう。 一生懸命彼女から離れようとしている葉月だが、彼女の腕力はハンパじゃなく、全く離れることが出来ない。

 ちなみに、彼女の着ているのはブレザーを抜かせばアンダーウェアのみなわけで、そのせいで葉月の顔に彼女の胸の感触ほぼじかに伝わってくる。 また、なんというか、女の子独特の香りが葉月の鼻孔をくすぐっていて彼の精神を混乱させる。 いくら無愛想で基本異性に興味がない篠原葉月と言う人間も、結局は『男の子』なのだ。

 だが、息が出来ないのに変わりはないので、苦しくさのあまり、葉月それらをすぐに意識の外においやってしまう。

 

「あの〜……真理さ〜ん? 真理さん? 神錠真理(かみじょうしんり)さん!? ちょ、ちょっと離してあげて! 篠原君の顔が青くなってきてる! あんた力入れまくってるでしょ!?」


 吉良のそんな声が聞こえた思ったら、真理は「え? あ、ごめん!」パッと離れた。 彼女の体から解放されると、葉月は息を整える。 今まで呼吸が出来なかったからではあるが、別の意味も含めての行動だ。

 真理はそんな葉月の顔を覗き込みながら両手を合わせて、


「いや〜、ごめんごめん。 君可愛くてついね」


 『つい』で呼吸困難にはなりたくないものだ。 そう思いながら真理を見上げたが、真理は既に葉月を見てはいなかった。 彼女が見ているのは、葉月の後方にいる人物。


戸塚雪奈(とづかせつな)。 あんた随分じゃない。 こんな可愛い子を虐めた上で自分の所に勧誘なんて……LEVEL7だからって、ちょっと調子に乗り過ぎなんじゃないの?」


 一方の戸塚はしかし、真理の言葉に答えず、ため息を吐くだけだ。 真理はその態度が気に入らないようで、


「ムキーーー!! なによ、なんなのよ、なんだってのよその態度は!!」


 完全に怒りを体全体で表しながら騒ぎまくる。 なんというか、おもちゃを買ってもらえない子供のようだった。 そして、戸塚を指差しながら、


「もう怒ったわ! 黄泉乃、()っちゃいなさい!!」

「ええ!? いや、自分が何言ってるか解ってますか!? 風紀委員会の仕事は、校内の生徒の監視及び、傷害などの理由の魔術の阻止なわけで、こっちから攻撃したりもはや殺すってのは、いくら戸塚が相手でもダメですって!!」

「そんなの今はどうだって良いわ!! ほら! 風紀委員会会長の命令よ! さっさとやる! やるの! やりなさい!」

「風紀委員会会長の言葉とは思えないような言葉だな? 神錠」


 不意に、どこからか澄んだ声が聞こえてくる。 真理は自分の名前を呼ばれて心底不機嫌な顔をしながら、その声の下方向を見た。 中学一年校舎の方向だった。

 そこにいたのは、誰もが乱視用だと解る様な分厚い眼鏡をかけた小柄な少年だった。 柔らかそうな黒髪を短く切り、黒一色に統一された上下の服の上に、医者のような裾の長い白衣を羽織っている。


夕凪孤鉈(ゆうなぎこなた)……っ!」


 真理が歯噛みしながら唸る。 それが少年の名前なのだろう。 しかし、ここで葉月は彼の苗字に違和感を持つ。


(夕凪(ゆうなぎ)?)


 夕凪。 葉月の友人で夕凪護(ゆうなぎまもる)という人物がいる。 だらしがないが少女のような顔をした美しい少年だ。 目の前の少年も、性を夕凪というらしい。

 もしや兄弟だろうか? 夕凪なんて苗字は珍しいし、可能性はある。 しかし、目の前の少年が自分の知っている夕凪と似ている部分があるとは思えなかった。 顔の輪郭、目、鼻、雰囲気。 どれも似ていない。

 そんな疑問を抱きながら、葉月は目の前の少年、夕凪に声をかける。


「どなたですか?」


 夕凪は後輩の葉月に対して、軽くだが、礼儀よく頭を下げた。


「初めまして篠原葉月君。 僕は夕凪孤鉈(ゆうなぎこなた)。 生徒委員会(フォースエンジェルス)の会長をやっているものだよ」


 答えた夕凪の口調はとても滑らかで、やさしさを感じるものだった。 それが後輩のみに対しての物なのかどうなのかは解らないが。

 夕凪は顔を上げ、


「早速だが、君をスカウトしに来たんだ。 篠原葉月君。 生徒委員会に入る気はないかい?」

「え…………?」


 紳士な態度でそう聞いてくる。 しかし、ここでも葉月は迷った。 このままで良いのか? こんな簡単でいいのか? 何かあるんじゃないのか? 今のこの状況は、葉月をここまで不安にさせるほど、上手く行き過ぎている。

 そこまで考えると、不意に「だめよ!」という声と共に頭にむにゅぅ、とした物が当たった。 見上げてみると、風紀委員会の会長、神錠真理が自分を抱きしめているところだった。


「この子を勧誘するのはやめなさい、夕凪孤鉈! この子は風紀委員会に入るの! 入れるの! 入れさせるの!」


 なんだか駄々っ子のように言い放つ真理に、夕凪はしかし、表情を動かさない。


「君が勝手にそう言うのは勝手だが、それは結局は本人の意思だ。 篠原葉月君。 君はどちらに入りたいと思う?」


 あくまで笑顔で言ってくる夕凪の顔に曇りはない。 大人が小さい子に接する態度と似ているような気がした。 


「…………」


 しかし、そんな態度でこられても、今の葉月に答えは出せない。 どうすればいい、どうしたらいい、どうやればいい。 考えれば考えるほど俯き、追い詰められてしまう。

 次の瞬間、葉月の思考を中断させたのは真理だった。

 

「だったらこうしましょ。 生徒委員会、風紀委員会で代表者を決めて闘技場で勝負するの! 勝ったほうが篠原君を委員会に入れる。 これでどう?」


 かなり傍若無人な意見だった。 言った本人は腕組しながら偉そうに胸を張っている。 この意見に夕凪は、


「ふむ……良いだろう。 開始は明日の午後の1時にしようか。 篠原君も、それで良いかい?」


 夕凪がやはり笑顔で聞いてきた。

 その笑顔に、葉月はさらに頭を悩ませる。


(ここで悩んでいたって、前に進まないことはわかっている。 だけど、もしかしたら校長の………………まてよ?)


 悩んだところで浮かんだ疑問に葉月は考える。 そもそも校長の手がかかってはいけないという理由はなんだろうか。

 もともと、葉月の『生徒委員会か風紀委員会に入る』という目的は、校長の葉に取られた自分の書物を取り戻すという目的のためにある。 つまり、『たとえ校長が今回の件に絡んでいても、葉月の目的には何の支障もないのだ』。

 そう。 彼は単に、『アイツの手は借りたくない』『アイツに勝ってやる!』というものに似たような、いらないプライドに干渉されてしまったがゆえに、要らない心配をし続けていたのだ。


(うわ……ぼく相当間抜け…………)


 あまりにも馬鹿馬鹿しくて、頭を抱え、本気で自己嫌悪になる。 そんな葉月を生徒委員会、風紀委員会の会長同士が不思議そうに見つめる。


「そ、そんなに悩むことなのかな?」

「さ、さぁ? 篠原君? そ、そんなに悩むことじゃないのよ?」


 悩んでいるのではなく、自分自身を呪いまくっているのだが、そんなことをこの二人が知るわけない。

 結果。 夕凪の提案通りの予定となり、その場で全員が解散することになった。

 葉月は寮に帰る時も、帰った後も、美久と愛海が帰ってきた時も自分自身を罵倒しまくっていた。 篠原葉月という少年が、意外とデリケートな人間であったことが発覚した夏の昼頃。


はい、お久しぶりですね!(いい加減更新速度を速めないといけないとは解ってはいます)

内容のことを話す前に、皆様に質問があります。

更新期間の事を聞くわけではありません(自覚してるからw)。聞きたいのは、一話一話の長さはこの位で良いのかという事です。

かなり今更ですが、少し気になりました。最近、「短くないかな?」なんて気がしていたので、聞いてみる事にしたのであります(要望などがあれば、出来るだけ答えたいので、よろしくお願いします)。


さて、内容のほうに入りますか。

今回現れた新キャラは、神錠真理(『まり』ではなく、『しんり』と読んでください)。見た目は美人なのに、幼稚な正確な、困った会長さんです。

物凄いインパクトのキャラと言うのが今まで居なかったので、自分なりに作ってみました。いかがだったでしょうか?

そしてもう一人、夕凪孤鉈(捻りもなく、『こなた』と読んでください)。まぁ、何考えているかわからないタイプの人間ですね。本音、これといったコンセプトはありませんw(適当と言うわけではないのですが)


あ、ちなみに、この話はこれでおしまいです。


…………………………いやいやいや!違いますよ!? おしまいというのは、第五の話が終わるという事であって、今回が最終回というわけではありません! 次の第六へと移るだけです!


さて、次のお話は、『学年最強同士の激突』が主題としたお話となっております(まぁ、第3と同じく、Part2からが戦闘開始なのですが)。


あ、ちなみに、今日俺の誕生日なのです(どうでもいい)。 17歳になりました!

大人の道まであと一歩ですね!(なんのや)


では、今回はこの辺で。 皆様の感想、評価、アドバイスなどをお待ちしております!



現在、ボイスブログをやっております。

URLは貼っておきますので、お暇があれば、遊びに来てください→http://www.voiceblog.jp/night-lock/



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