第五:対なる二つの組織 Part1
2067年7月10日
「では、つぎ……篠原葉月君、お願いします」
「……はい……」
自分の名前が呼ばれ、葉月は静かに返事し、数歩前に出る。
今日は定期試験の実技試験日。
如月学園の定期試験は二つに分けられる。 最初に筆記試験を行い、その後、結果発表と共に実技を行う。
筆記試験は7月に入ると同時に終わり、その結果は今日の午前中に発表された。 その時に葉月は、学年第4位というなかなか(自分的には)の成績をたたき出した。 そして、その日の午後である今が、実技試験日というわけだ。
葉月は精神を落ち着かせ、心を澄ます。 そして、一度息を吸い込むと、自身の体内魔力を鋭くする。 イメージは荒野!
「大地よ起きろ。 姿は槍。 数は三十。 我が示す場を穿て」
葉月の静かなる軍歌が闘技場の中で文字通り静かに響く。
次の瞬間、葉月の詠唱から一秒もしない間に体育館のフローリングを貫いて無数のコンクリート製の鋭い槍が天まで突かんとの勢いで生え出してきた!
闘技場内に、クラスメイト(かんきゃく)の「おおー!」と緊張のかけらも無い感心の歓声が響き渡る。
しかし、葉月は
(LEVEL4ってのも……たいした事ないんだな…………)
今の魔法は、自分にとっては最大限に力を発揮できる全地属性魔術の中でも中級の魔法だ。
実際は、入学したての1年生が中級の魔術を使えるだけでも相当なことなのだが、当の葉月自身はまったく満足していない。
はっきり言うと、今の魔術は前日の斐川戦の時に使用した魔術と同じだ。 少しアレンジしたので微妙に違うが、その違う部分と言うのは、槍の数をすこし増やしただけだ。
もっと高等な魔術を使えばよかったのだが、今の葉月にはそれが出来ない。 その理由は彼の手を見れば解る。
彼の手が痙攣しているのだ。
魔術を使うための魔力と言うのは基本精神力だが、体力にも影響は来る。
篠原葉月と言う人間は、喜怒哀楽などの感情が表情に出にくい人間だ。 だから表情では解りづらいものの、実は今の魔術で葉月は相当な体力を消耗している。
「あいかわらず凄いわね。 先生びっくりしちゃった」
横から担任の眼鏡の女教師が何だか楽しそうに話しかけてくる。 葉月は隠すように手をポケットの中に入れる。
この教師は何かと人のみを案じるので、今の葉月の手の震えを見たら、即効で「保健室に行ってらっしゃい」というだろう。 正直、保健室行きはゴメンだった。
「私が魔法覚えたての頃なんてね? 全然ダメで、発動すらしなかったこともあるの。 あ、でもたまにだよ? 何時もじゃないの。
でも、篠原君はすごいよ。 私初めて見たよ、一年生でLEVEL5並の魔術が使える子! まぁ、一年生でLEVEL4っていうのも、初めてなんだけどね」
キャッキャキャッキャとマシンガントークを繰り広げる我が担任の女教師(名前忘れた)。
いつもの葉月なら、鬱陶しいと言う感じに睨みつけるのだが、今回はそれすらも億劫で、「そうですか」と葉月は適当に流した。
(本当に……LEVEL4になったのかな…………?)
葉月は先日、LEVEL4になった。
理由はよく解らないが、その日、魔力が急増量したため葉月の体に悪影響が及び、その処置と同時にあの校長からLEVEL4の『器』をもらったのだ。
いきなり過ぎて意味が解らなかったが、何はともわれ、篠原葉月はLEVEL4になった。 だから、今回の試験では自分にとって今までで最高の魔法が出来るかもしれないと思っていた。
今回に備えて、斐川とともに魔術の練習もし、新しい魔術、もっと高等な魔術だっていくつか習得してきた(そのたびに斐川は文句を言っていたが)。
なのに、今本番使用した魔術は、今までで一番と言うのには程遠いものだった。 調子が出なかった? いや、そんなものじゃない。
(くそっ…………これじゃあ、生徒委員会、風紀委員会にも入れないかもしれない……!)
その両方の委員会は普通の委員会とは違い、立候補ではなく、成績優秀な生徒のみが選び、あちらからスカウトするという形で入る入らないかが決まるのだ。
しかし、今の自分では優秀な成績が得られないかもしれない。 せめてトップ3に入らなければ、選ばれる可能性は低いのだ。
葉月は早くあの魔道書を取り戻さなければならない。 だが、そのためにはその二つの委員会のどちらかに入らなければ始まらないのだ。
しかし、彼がそう悔やんでいる間、すぐさま試験結果発表の日はやってくる。
数日後、彼は学年2位という成績が発表された。
第五話へと入りました!
もうそろそろ俺がこの小説を書き始めて一年になるんですね…………。
俺、成長してるのかな…………?
さてそれはさて置き、次の投稿では新キャラの登場です! ていうか、今回の第五話は今までで一番登場キャラの登場が多いと思いますw まぁ、それでも3,4人くらいですが……w
さ、そろそろ仕事(執筆)しますか!
では、感想、評価、アドバイスなどをお待ちしております!
現在、ボイスブログをやっております。
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