表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/38

「ノリコ・プレミアム」始動!(上)

ノリコは、簡単な自己紹介をした後、二人の話に耳を傾けていた。加わってみると、特別な話題で話が続いているわけではなかった。 ただ、その年上の女性とエマ先生の視線は、ノリコの何かに気づいたタイミングで、数回、交差していた。


同席していた女の子は、帰る直前に、「エマ先生、玄関で、ちょっと失礼します」と断って、ワンピースの裾を少しだけめくり上げ、ガーターベルトのような物で、太ももを締めていた。びっくりしたノリコに

「最近、忙しくて、運動不足になっちゃって、外を歩くときは、加圧してるんです」

と、笑っている。

ハイヒールだけでも大変そうなのに、加圧のベルトをして大丈夫なのだろうか。ノリコの不安な表情をよそに、ここでは、当たり前の事なのか、エマ先生は何も言わない。


三十分ほどして、ノリコと先生だけが、スタジオに残って、これから毎日心がけるエクササイズを教えてもらう時間になった。 ノリコは、バックに入れておいたTシャツとレギンスを取り出した。エマ先生が慌てて止める。

「あっ、着替えないでいいの。 普段の生活の中で出来るエクササイズしかやらないから。運動する為の時間を、わざわざ作るの大変でしょう? 」

「でも、定期的に時間を作って、取り組まないと、効果が上がらない気がするんですけれど」

エマ先生は首を横に振る。

「今の生活の全てを、自分を綺麗にする為のエクササイズに変えるの。毎日の生活を利用して、どんどん綺麗になっちゃいましょうよ」

「今の生活を、全てエクササイズって、どうやって? 」

「焦らない、焦らない。細かい事は、追い追いね。とにかく、ざっくり話すと、今この瞬間から、ノリコさんは、舞台に立つの」

「舞台?」

「もし、人から見られる立場になったら、どんな風に変わると思う? 」

「それは、多分、身なりに気を使ったり、言葉遣いも丁寧になって……、あと、身のこなし方も、見られてると思うと緊張して、雑にはならないです」


エマ先生は、大きくうなづいた後、ノリコの姿が、鏡の二方向から映る位置に誘導した。

「ねえ、お年寄りのモノマネ、してもらえる?」

「お年寄り?」

「どんなイメージが最初に浮かぶ? 体を使って、表現してみて!」

「腰が曲がって、えーと……」

ノリコは、前かがみの姿勢を作った。

ノリコの答えは、まだ途中だったが、エマ先生は満足そうだ。

「実は、ノリコさん、姿勢がちょっと猫背気味で、後ろ姿に疲れが出ちゃってるの。 会社でパソコンに向かいっぱなしのせいもあるのかな。 でもそれって、すっごく損してるのよ。 今のままじゃ、本当に三十五歳か、それ以上にしか見えないの。 猫背の姿勢に、若さや元気って感じられないでしょう? 」

ノリコは、高田部長の若々しい立ち姿を思い出していた。たしかに、姿勢は大事だ。

「まず、背筋をピン!と伸ばして、後ろ姿を若くしちゃいましょうよ。

で、今日から、寝ている時もエクササイズにするの」

「寝る前に、必ずやるってことですね」

エマ先生は、ノリコの的外れな答えにも嬉しそうだ。

「寝返りはどんどんしてもいいのよ、でも、なるべく、横向きの姿勢で寝る時間を、短くして欲しいの。横向きだと肩が前に入っちゃうから」

「ずっと、仰向けを意識しながら寝るってことですね」

答えてはみたが、これだけでも案外大変そうだ。


「ねえ、ノリコさん、誰だって綺麗になりたいわ。でも、身体のパーツ全てが、望み通りにならないのなら、今、自分の体にあるもので頑張るしかないじゃない? 」

ノリコはうなづいた。

「もちろん、ノリコさん、今のままでも綺麗よ」

「いえそんな」

エマ先生に、真剣に言われると恥ずかしくなる。

「だけど、もっと綺麗になれる、っていうか、もっと綺麗なノリコさんを見せられるはず。

さっき、私が、ノリコさんの後ろに立って姿勢を直したでしょ。あの後、動きはぎこちなかったけれど、ここに来た時よりもかなり、スッキリした後ろ姿になってたのよ。 身体の前も大事だけれど、後ろ姿も素敵になったら、誰かに注目される機会は、二倍になるのよ!」

「後ろ姿を綺麗に? 」

「そう、素敵な人は、いつも自分の前から来るとは限らないでしょ? 出会うチャンスを二倍にしましょ!」

「出会うチャンスを、二倍に……」


「私とのレッスンは、まず、一人ではやりにくい背中側のエクササイズを徹底的にやるの。メイクやファッションは、今、情報があふれて、一人でもかなり出来るから……。

後ろ姿で、効果あるのが実感できたら、自然と前側もやりたくなっちゃうわよ」

エマ先生は話し続ける。

「なんていうのかなー、同じ中味のものでも、製品名にプレミアムって付くと、その方がお得な感じがして買うでしょ、買う側の心理として……」

「プレミアム? 」

「飲み物でも、お菓子でも、プレミアムって付くと、そっちの方が良く見えない? 」

ノリコはうなづく。

「そのプレミアム感を、まず、外見でわかるようにしたいの」

「服装とかでですか?」

「ううん。服装は、流行もあるし、お金がかかるわ。

言ったでしょう? 今、ノリコさんが持っているものをなるべく活用して頑張るのが、第一段階、メイクや服装はその後!」

「基礎、土台作りを先にやるんですね」

「そうよ、外見を最大限活かす為の中身、つまり、魅力的なボディーを作るのよ。

スッキリとした背中、膝が前に出ないまっすぐな脚、両肩が前に入らない女性だけが持てるデコルテのライン、その綺麗な姿勢のボディーにお洋服を着せて……」

「着せて……?」

エマ先生は、急に、小悪魔のような上目遣いになった。

「誘うのよ」

「ど、どなたを誘うんですか? 」

「あー、もう、いいわ、いやんなっちゃう。

きっとねー、あなたのこと好きな人ってたくさんいるのよ。でも、そのボーイフレンドに、今も気持ち引っ張られてるから、気づかないのよ。

まあ、どうでもいいわ、そんな過去のことなんか……。

とにかくぅー、「ノリコ・プレミアム」作戦、始動よ! 」


**********


最後まで読んでいただきましてありがとうございました。

今日7/17(金)の夜、9時前後の活動報告で、作品の楽屋話と第19話の投稿予定日時をお知らせします。よろしかったらそちらもご覧くださいませ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ