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崩れたのは私か彼か

 猫背の背中を、発見。

 さすがに一日二回も訪ねるのはまずいと思ったのだろう。

 今、私は一人で玄関に立っている。

 校門の方に歩いていく彼も、一人だった。


「一人の時は、すっごく弱弱しいのね。あの人」


 ぽつりと出た言葉に、勢いよく首を振った。

 何、言ってるの。

 もしかしたら、別人かもしれないじゃない。

 会ったばかりの人を背中で見分けられるわけ、ない。

 でも。


「あれはあの人だよねぇ」


 変な確信がある自分が、ちょっと怖い。

 そして、早足で彼の背中を追う自分に、もっと怖くなった。


「か……瑞季、先輩」

「え?」


 振り返った人は、本当に彼だった。

 見間違いでも恥ずかしくないように小さく吐いた声に、驚いた様子で私を振り返る。

 非現実にでも感じていたのだろうか。

 はっとなった彼は、さっきまでの弱弱しさを掻き消す。

 ……猫背じゃ、なくなった。


「ひよ、ちゃん……」

「一昨日も昨日も迎えに来たくせに、今日は放置なんですね」

「今、瑞季って呼んだ……?」


 私の皮肉には、何も反応を返してくれないらしい。

 それくらい驚いているのかと思うと、ちょっと笑えてきた。


「ひよちゃん」

「何ですか?」

「も、一回」


 何が、と聞かなくてもわかってしまう。

 それを与えてもいいと思う私は、どこかがおかしいんだ。

 そう思わなきゃ、やってられない。


「瑞季先輩」

「もう一回」

「瑞季先輩。……あと何回言わせる気ですか?」


 泣きそうな彼の表情も気のせいだと思わなきゃ、やってられない。

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