表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/21

気づけない変化の音

 すぐに見えなくなった、彼の本当の姿。

 そもそも、そんなもの、一欠片も見えてなかったのかもしれない。


「……え?」

「だから、春日井は香椎と付き合ってるのか?」


 彼を殴って放置して帰った翌日、私は何故か担任に呼び出された。

 滅多にないことに首を傾げていた私に向けられたのは、そんな質問だった。


「別に、付き合ってません……けど」

「……そっか。じゃあ、友達ってとこか?」

「ん……そんな感じかもしれません」


 担任の表情を見て、つい一昨日に会ったばかりなんて言えなかった。

 すごく、残念そうな表情をされた。

 そんなに私が彼の彼女であってほしかったのだろうか。


「あいつのこと、頼むな」

「え、冗談でも頼まないでください」

「はは、きっついなぁ。……でも、これはマジだから。あいつのこと、頼む」


 あいつは春日井が思っている以上だ、と付け加えて、担任は私を解放した。

 何が、私の思っている以上なのだろう。

 見たまま、接したままの彼が真実ではないのだろうか。

 私が知っている彼が、本当の姿ではないってこと?


「わっかんないし……」


 何を頼まれたのか、まだはっきりとはわからないけれど。

 こんな面倒なことを頼まないでほしい、と思う。

 だって、私はあの姿しか知らない。

 きっと、これからもあれ以上の姿を知ることはないと思う。

 そもそも、担任の思う、私の知っている彼ってどんなもの?


「思っている以上……か」


 ふと思い出すのは、昨日の出来事。

 ちらりと一瞬振り返った先にあったのは、小さな彼の姿。

 いつもと違う笑みを浮かべて、床を見つめていた姿。

 彼の本当の姿が、見えない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ