きっとそれは簡単なこと
手は想像よりも冷たかった。
いつまで経っても触れてくれないから、自分から触れる。
意外と大きくて筋張っているそれに、ちょっとだけいいなと思った。
「どうすれば、責任をとれる?」
「そんなの、瑞季先輩が考えてください」
私の手を振り払うことはしないらしい。
大人しくされるがままになっている。
自分からは何もしないということなのだろうか。
「ははっ……それがわかるまでひよちゃんから離れられないってこと?」
「どうでしょうね」
「ひよちゃん、最高。……ありがとう」
この手が私を捕らえて、突き放した。
彼の手を握ったり撫でたりしながら思う。
手が冷たい人は心が温かいと聞いたことがある。
彼はどうなのだろう。
私が知る限りでは、とても温かい人だけれど。
それが本当かどうかわかるほど、まだ彼を知らないのも確かだ。
「ひよちゃんのこと傷つけるかもしれない」
「そうですか」
「でも、ひよちゃんのそばに置いてくれる?」
「……好きにしてください。でも」
言葉を切ると、やっと彼は私を見た。
そして、ぎゅっと私の手を握った。
私の体温と彼の体温が混じる。
もう、彼の手を冷たいとは思わない。
「でも、何?」
「でも……もう瑞季先輩がいないと、寂しくてしょうがないんです」
「……そっか」
嬉しそうに微笑む彼を、私は久々に見た。




