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1話 義妹が朝ご飯を作ってくれました

『しんいち君、だーいすき!!』


 5歳の頃の愛里だ、可愛かったのを思いだす。

 この頃、俺はまだ『兄』ではなかったんだよな…


『お兄ちゃん、だいすき!!』


 小学一年生の頃の愛里だ、うん、可愛い、食べちゃ…失礼。

 この頃くらいには『お兄ちゃん』と呼ばれる様になってたな。


『お兄ちゃん、大好きです♪』


 中一の愛里だ、中学の制服を着ている。美少女だ。

 その瞳にハイライトは無く、虚ろに俺を見ていたな…

 制服に飛び散った鮮血は誰のだったか?

 覚えてないな…いや、俺は全て忘れたことになってるんだけど。

 この頃の愛里は不安定だったからな。

 愛里のお母さんと、俺の父さんが結婚した年だったし。

 環境が変わり過ぎて、そのストレスであんな『事件』を起こしたのだと思うけど…


 ハイライトを消した義妹が俺の身体を撫でる。

 手足が縛られており抵抗出来ない。…まぁ、するつもりも無いけどな。

 俺の好みを研究し、整えられた髪型はポニテ。美しい黒髪によく似合うな…巫女服とか頼めば来てくれるかな?

 その結ばれた髪が妖しく揺れて、俺へと近付いて来る。

 

 背後から蒼いオーラが出て、カマキリの形状をとった、思念体だ。

 この頃だったかな、愛里が『能力に目覚めた』のは…


 愛里はそっと、キスしてしまいそうなくらい顔を近付いてくると、妖しく微笑み俺の耳へと口を近づけた。

 吐息が掛かって、なんとも言えない感覚だ…


『お兄ちゃん、朝だよ?』


 その言葉で目が覚めた。



 朝から爽快な目覚めだ、なんてたって妹が起こしてくれるんだからな。

 瞼を開けたとき、夢で見たのと同じくらい顔が近くにあったのは驚いたが…

 俺の顔を真上から覗き込む、夢で見たより少し成長した、俺の自慢の妹・愛里が、和やかに微笑む。


「お兄ちゃん、おはよう♪

 もう、起きちゃったんだ」


 後ろの一言は華麗に無視してあげよう。

 起きなかったら、どうなってたか非常に興味深いが、俺は彼女の『闇』に気付いていない設定だ。


「おはよう、愛里。

 悪いが起きれない、すこし退いてくれ」


 妹は慌てた様に身を離すと、ベッドの横に立った。

 俺が身体を起こすのをじっと見つめている。

 よく見るとエプロン姿だ、朝ご飯の準備をしていたのだろうか?


「朝飯できてるのか?」


 そう言うと愛里は朗らかに笑った。

 笑顔が美しいぜ、写真に残しときたい。


「うん♪ 今日も、お兄ちゃんの為に頑張って作ったんだよ」


「そうか、ありがとう

 愛里は料理がうまいからな。

 父さんが生活能力無いから、二人暮らしだったころは大変だったんだよな…

 愛里と分担出来て凄く助かってるよ」


 俺が素直に感謝の意を述べると。

 愛里は頬を赤く染める。

 瞳からハイライトが消えた…


「あ、ありがとうお兄ちゃん♪

 わたし、これからも頑張るからね♪

 お兄ちゃんが喜んでくれる様に頑張るからね!!

 例えどんな料理でも、お兄ちゃんがリクエストしたら完璧に作くれるようになるから。

 どんどん、リクエストしていいよ♪

 まぁ、今の段階だと、優花さんに及ばないかもしれないけど…

 わたし、絶対にお兄ちゃんの胃袋を掴んでみせるから、期待しててね?

 あの女共には絶対に負けないから♪」


 それだけ言うと、

 恥ずかしいぃ…と、言いながら、走って部屋を出て行った。


 ふと、気付く。

 部屋の鍵…掛けて寝た筈なんだよな…

 流石、我が妹、ピッキングの技術もマスターするとは、兄として鼻が高いぜ…



 ダイニングキッチンのテーブルの上に並べられた、本日の我が家の朝食をご紹介しよう。


・ハムエッグ(俺が好きな、半熟くらいの固さ)

・フレンチトースト(俺の大好物)

・ベーコンサラダ(普通に好き)

・牛乳(俺が好む、砂糖と牛乳の神配分を完璧に再現)


 全て、俺仕様に固められた朝食だ。

 朝は、みそ汁と白米派の父が見たら絶句するな。

 まぁ、この場に居ないから別にいいけど。

 父も義母さんも、朝が極めて遅い。

 父は漫画家、義母さんはミステリー作家である。しかも、二人ともかなり多忙な人だ。

 父は徹夜続きだし、義母さんはトリックが浮かばないとかで3日前から部屋に籠っている。


 故に、居ない人間の好みを気にする必要は無いのだが。


 俺に向かい合う様に座る愛里は、多分、俺が食うのを待っているのだろう。

 ニコニコが眩しいぜ、見つめられたら食えないぜ。


 コーヒーを一口。

 うん、神配分。

 砂糖は正確に量ったことがないから解らないが、普段俺が入れるのと同じ量。

 牛乳は、俺の研究したベストラインから淹れ始めたもの…

 淹れたてなのに熱く無く、それでいて身体が温まる、甘いだけじゃなくコーヒーの苦みも殺さない神配分。


 俺、このレシピを愛里に教えた記憶無いんだよな。

 ずっと、俺が淹れるコーヒーを観察してたのか…

 やるな、妹。流石だぜ。


「お兄ちゃん?

 早く食べないと、学校に遅れちゃうよ?

 もしかしてお腹イタいの?

 大丈夫!?

 直に、お医者さんに行こ!!

 …まだ、一般の診察空いてないかな?

 でも、緊急事態だもんね

 救急で行こ、お兄ちゃん!!!」


 心配そうな顔で、病院に行く準備をするために席を立とうとする愛里を慌てて止める。

 また、ハイライト消えてたぜ、妹よ…


「大丈夫だよ愛里、何処も痛く無いし病気もして無い。

 たく、愛里は心配性だな。ありがとう。

 ちょっと、寝ぼけてボーとしてただけだよ」


「そう…それなら、良いんだお兄ちゃん♪

 わたし、ちょっと慌てちゃった」


 笑いながら席に着く愛里を見ながら、フレンチトーストを口に運ぶ。

 完璧に俺の為に作られた料理は、恐ろい程に美味しかった。


 流石、愛しの妹だ。

 兄は鼻が高いぞ。






 

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