第七話 迫りつつある戦闘 神谷に押し寄せる不安と水野の言葉
皆さまお久しぶりですあの味です。
毎回ですが投稿の方、遅くなってしまい本当にすみません。
次話は1週間以内に挙げたいところです。
それでは、本編どうぞ!
那覇航空基地までは数時間で到着した。
沖縄基地から此処まで来るまでの間、特に何も無く波も荒れることが無かったお陰で爽快な航海をすることが出来た。何かあったとするのならば、何回か漁船とすれ違ったことぐらいだ。実は、覇龍は市民に一般公開されていないため、その存在を知っている者は政府の人間と軍人ぐらいであろう。なぜ、覇龍を一般公開しなかったのかは外国にその存在を知られたく無かったからだ。故に、覇龍は日本海軍の精鋭艦でもある。それを一般公開してしまっては、自然と世界に知れ渡ってしまう
のである。政府は覇龍の存在が知れ渡るのだけは防ぎたいのであった。しかし、一般公開しなくとも、他国の衛星に映されればそこで終わりである。そのため、水上は日本の諜報機関を使い、他国の衛星の通過時刻などを調べ上げ、『覇龍』を動かしていた。すれ違った漁船の船員たちは覇龍の雄大さに驚きはしたものの、日頃から艦船との関わりが無いためそれがどんな艦なのかまでは分からなかった。
那覇航空基地は日本海空軍の管理する基地であり、滑走路の近くに軍港が設置されている。航空基地の真横には陸軍の駐屯地があり、中国上陸に向けての兵達が集められている。
そんな、徐々に兵力が集まりつつある基地の軍港に覇龍たちは係留されていた。
「暇だわ…」「暇ですね…」「は!?何を言い出すんだよ急に…」
「暇だって言ってるの!さっきから何?この気まずい沈黙は!」「そうです!」と覇龍も破龍に賛同するように言ってくる。確かに覇龍たちが言う事には一理ある。実はひゅうが達と別れた後、沖縄基地から航空基地まで移動する間、最初はにぎわってはいたが、徐々にどんな話を切り出せばよいのか分からなくなってきてしまい、途中からほとんど無言が続く状態であった。
内心、破龍が喋ってくれた事にホッとしていたりもする神谷である。
「まあ、確かにそうだけどねぇ…話すことが何もないんじゃ…」
「だったらあんたが話題を作りなさい」
「んな無茶な…出来てたらとっくに出してるよ」
「神谷さん!」 「なに?覇月」
「頑張って下さい!」
「うん!って何を!?」 「何って、話題作りですよ」
「そう言う事よ頑張りなさい」
「いや、『頑張りなさい』じゃなくてぇぇぇぇぇ」
『覇龍』の一室から悲鳴が木霊した…
――――――――――――――――――――――――――――
「はぁ…」
覇龍たちと別れてから神谷はひとり廊下を歩いていた。さっきの悲鳴のせいか、自室をでてから先ほどまですれ違う人からは、自分を心配する声や、少し変な目で見る者など、いろんな反応をされて一寸、心が痛かったりもする。。
「…ん?あれは…水野か?」自分より少し前の方からこちらに向かって歩いてきている。正直今、一番会いたくない相手である。なぜなら、絶対にさっきの事でちょっかいを掛けらると思ったからだ。
ばれない内に此処から立ち去ろうと思い身を翻した。が、遅かった。
「お?神谷かいな」 ―――げ、気づきやがった
「さっきは凄い悲鳴だったな、覇龍全体に響き渡ったと思うぜ。あんな面白い声は久しぶりに聞いたな。思わず笑っちまったぜ」そう言いながら先ほどの事を思い出したのか、笑いながら方に手を置いてくる。
「それはどうも、ありがとさん」
「ひっ、ひっ、ふぅ………艦魂かいな?」
「ん?まあ、そうだけど…」
「そうかい…正直お前が羨ましいぜ」 「なんでだ?」
「そりゃあ、あんな可愛い女の子たちとわいわい出来るんだからよ」
「お前の頭ん中は可愛い子のことしか頭にないのか!?」 「当たり前だ」と水野は堂々と胸を張る。
そんな水野に呆れながら「お前はたぶん天才だな」と呟いた。そして、水野はそののまま言葉を受け取ったのか、「褒めても何も出てこないぞ?」と返してた。
「いや、褒めてねぇよ!!」
神谷のツッコミにやっと意味がわかったらしく。「なるほど」という顔をみせた。
「でも、好きだ!」
「好きだっつてもなぁお前、艦魂だって可愛いだけじゃなくて、暴力を施してくる奴もいるんだよなぁ、大変だぜ?殴られれば軽く吹き飛ぶからなぁ」そう言いながら神谷は破龍の事を思い浮かべる。
「でも、可愛いだろ?」そう放った水野の「可愛い」という言葉が、破龍から受けた数々の暴力を思い浮かべていた神谷の頭の中に加算された。
――――――う~ん、ここに来るまでに絶覇に幾度となく暴力を振られたからなぁ……ん?可愛いかって?そういや、絶覇は…確かに可愛いって言われればそうだなぁ…少なくともそこらの女性よりも……って何を考えてんだおれはぁぁぁぁぁ!
「お、おい顔が真っ赤だぞ、大丈夫か?」
「あ、ああ一応…」
「しかし、そこまで顔を赤くするなんて好きなのかそいつの事」
「そ、それはねぇよ!」
「図星すぎるぞ~」
「は、はぁ~!?」
(こりゃ、弄られるな)と思った神谷だが、水野によってそれを行われる事が無かった。少なくとも今日は。
『ピンポンパンポ~ン』
「「?」」
『只今より、緊急会議を始めます。前に集められた方々は至急戦闘指揮所に集合して下さい』
『ピンポンパンポ~ン』
「作戦内容の事かな?」
「たぶんそうだろ」 「それじゃあ行きますか?」 「ああ」
――――――――――――――――――――――――
戦闘指揮所には既にみんなが集まっていた。前と同じように西森艦長を中心にして集まっている。神谷達も急いで近寄った。そして、西森からの話を待った。
「皆は薄々どんな事について集められたかは予想が付いているだろう。その予想は確信に変えて貰ってよい。そう、尖閣諸島についてだ。政府からの通達はこうだ。【明後日には出航して尖閣諸島に向かい、五日以内に尖閣諸島に所属している島を占領しろ】との事だ。まあ、尖閣諸島の島々は小さい。そのため上陸さえする事が出来れば、占領までそう時間は掛からないだろう。上陸が、出来ればな。言っている意味が解るな?」
「つまり、海上優勢の状態を素早く作る事ができれば、この作戦も早く終わる事が出来るということですね?」そう一人の兵が言った。
「その通りだ、だから我々の艦隊らが如何に素早く敵艦隊を倒すことが出来るかが重要なってくる訳なんだ。そのため、この作戦の勝敗は『覇龍』たちに掛かっているのだが、そんな『覇龍』たちを動かす事のできるのは君たち海兵なんだ。皆、心してこの作戦に掛かってくれ」
「ハッ!!」
西森に対して、集まった海兵たちは皆、敬礼のポーズを取る。もちろん神谷もだ。
「うむ。皆のこの『覇龍』を頼むぞ」そう言って。西森も、敬礼のポーズで返した。
――――――――――――――――――――――――――――
緊急会議を終えた後、神谷は水野と一緒に甲板を散歩していた。
「明後日か…」
そう神谷がぼそりと呟いた。
「ん?どうした神谷」
何と言ったのか聞き取れなかった水野が聞いてきた。
「いや、明後日が俺の初めての戦いになるのなかと思っただけだ」
今までゲームでなら沢山敵を倒した事があったのだが、まさか自分が本当に戦場に赴くことになるなんて考えてもみなかった。ゲーム
とは違って現実では一回死んでしまったらそこでもう終わりなのだ。そう思うと怖くてしかたがない。
「ばかたれ、俺だって初めてだっての」
俺の事も忘れるなと言いたげに水野は返事をする。
「ああ、そうだね。ってか全員が初めての戦闘じゃないか?」
考えてみればそうだった。この艦に乗っている者ほとんどが、平成生まれの人ばかりだ。戦闘訓練を受けただけの兵士に倒す事など
できるのか心配である。
「確かにそうだな」
気楽そうに水野のは答える。
「やっぱ、みんな怖いのだろうか?」
「当たり前だろ。ってか、逆に怖くない奴なんているのか?自分が死ぬかもしれない戦いに行くっていうのに」
「そりゃそうだよなぁ」
「なんだ、お前怖がってるのは自分だけかと思ってたのか?」
そう神谷の心を見透かしたように聞いてくる。
神谷は水野の返答に少し驚いたがすぐに否定をする。
「べ、別にそんなことないって!」
「図星か…」 「うぐっ…」全くもって分かりやすい反応であると水野のは心の中でそう思った。
「はっはっは、お前らしい考えだな」
「……」
「大丈夫さ、怖くない奴なんて一人も居ない、俺だってそうだ。怖くないって言う奴は只の強がりか、変態だ」
少しでも神谷から不安を取り除いてやる。それが、神谷の友達としてできる事なのだと水野のは考えていた。
少なくとも徐々に神谷の不安が緩和している事は目に取って感じられる。そんな神谷の変化に水野のは安堵を覚えた。
「…っぷ」 「…?」
「プッフフ、変態って…水野も水野らしいよ」
「ふふ、まあそういうこったぁ、こんな時こそ笑いが必要だな」
「ああ、そうだな。ありがとう水野、お前お陰で少しは不安を取り除けた」
「俺は別に何もしてねぇよ」
「かっこよすぎるよ水野!」
「うん、知ってる」 「おい!」
あはははは、と笑いながら覇龍の甲板を歩く二人であった。
どうでしたでしょうか?
初の戦闘が迫る神谷、殺されてしまうかもしれないという恐怖が湧くものの、自分自身だって怖いのに、それでも神谷を励ます水野。2人の友情が見られたお話でした。
尖閣諸島での戦いのお話は次話を挟んでその次になる予定です。
そして、次話はさらに新しい艦魂たちが登場!お楽しみに!