第十二話 呉軍港
皆さんご無沙汰ですあの味です。
二週間以上も間を空けてしまい本当に申し訳御座いませんでした。
その上、今回は短いです。本当に済みません。
それでは、どうぞ!
瀬戸内海を航海した第一攻略艦隊は、広島県の呉軍港で停泊していた。
第一攻略艦隊は、呉軍港に停泊する陸軍の強襲揚陸艦「神州」、「あきつ」を沖縄まで護衛をするために此処、広島まで来たのであった。
「潮風が気持ちいいなぁ~」
「そうですねぇ~」
「そうねぇ~」
前に第一攻略艦隊の姫君達とある約束をしてから、既に三日が経っていた。この二日間は毎日のように艦魂達が神谷の自室に集まって、騒いでいた。お陰で神谷の部屋はいろいろと散乱している。しかし、今はそんな部屋の事を忘れて甲板の手すりに肘を当てながら潮風を浴びていた。
「そういえば広島って覇月や絶破の故郷だよな?」
「そうです。よく知ってますね?」
「いやぁ~勉強したからねぇ…海軍兵学校で」
「私達のお姉ちゃん達も此処の生れよ?」
「お姉ちゃん?」
「大和お姉ちゃんですよ」
「武蔵お姉ちゃんと、信濃お姉ちゃんは違う場所だけどね」
同じ大和型である『覇龍』に宿る二人の魂にとっては、今から七十五年も昔に沈んだ『大和』、『武蔵』、『信濃』が姉としての存在であった。しかし、今は海の深く海底で眠っている。
「姉に会いたいと思った事は無いのか?」
ふっと思った疑問を口にしてみる。
「もちろんありますよ」
「でも、仕方が無いじゃない。それはもう昔の事。今は目の前の事にぶつかっていかないといけないでしょ?」
「……強いんだな」
よしよし。という感じで神谷は絶破の頭を撫でる。すると、絶破の顔はみるみる林檎のように真っ赤になっていった。
「ち、ちょっと!行きなり何するの!?」
「いやぁ……何となく?」
「な、何となくでやるなぁ!!」
思わず反射的に神谷の鳩尾を殴ってしまう絶破。
「ごふぅ!?な、何で……?」
訳も分からずに吹き飛ばされる神谷。こんごうの木刀ほどは痛くは無いのだが、それでも人間の男性の力を越える威力で殴られてしまえば痛い事には変わりは無かった。腹を抱えながら酷くせき込む神谷。絶破は明後日の方向を向きながら口笛を吹いていたのだが、動揺しているのか、乾いた音しか出てこない。それでも一生懸命口笛を吹こうとしている彼女を見ていると、段々と愛らしく見えてしまう。
「……っく」
先ほどから頑張って口笛を吹こうとしているが、乾いた音しか聞こえてこなかった神谷は思わず笑ってしまった。慌てて口を押さえるものの既に遅く、その声は絶破に聞こえており、もういちど殴られる羽目になった神谷であった。
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「あ~まだ出航しないのぉ~?」
強襲揚陸艦「あきつ」艦内の廊下。「あきつ」の艦魂がつまらなそうに歩いていた。
「しっかし、戦争とはまた物騒なもん始めたもんよね~」
うんうん。と一人で呟いては一人で自分の意見に頷くあきつ。彼女の姿が見える者は居ない。そのためあきつは何時もの様に他から見れば相当恥ずかしい事を言い始めた。
「あ~自室に戻ってゲームでもやろうかなぁ………!こんな技とか面白そう!破邪滅裂剣!なんちゃって……」
こんな事、他の人に聴かれていたら恥ずかしいなぁ。と思いながら閉じていた目を開く…………そこであきつの思考は止まった。
「…………………」
あきつの目の前に一人の男が居たのだった。みるみる内にあきつの顔は赤くなっていくが、男の方は何も気にした様子もなく歩いてくる。ほっ……なんだ私が見えないのか。と、安堵した所に不意打ちが掛った。通り様にその男は「大丈夫ですよ……見てませんから………」と吐いて行ったのである。せっかく引いた顔の赤みがまたみるみる内に、さらに先ほどよりも赤くなっていった。
「ち、ちょっと!私の事が見えるの!?」
焦りながら恐る恐る聞いてみる。……が、男は一回こっちを見てそのまま奥へと進んで行ってしまった。一回だけ振り向いた男の目はとても悲しそうだった………
「ち、ちょっと待って!!」
あきつは、勇気を出してその男に声を掛けてみる事にした………
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「しかし桜が見れなかったのは残念だったなぁ……」
本当に残念そうに呟く神谷。
「そうですねぇ~見たかったなぁ桜………」
神谷に賛同するように覇月が答える。その隣では絶破も頷いていた。彼女達、『覇龍=破龍』が竣工されたのは2019年の夏だった。
そして、中国による攻撃から備える為にうるま市沖縄基地に駆り出された。しかし同年の冬。中国海軍による進軍が行われたが、この時『覇龍=破龍』は外洋に出ていて対応できず、他の沖縄に滞在する艦艇、沖縄に設置された大砲でなんとか中国軍を凌いだのであった。その後も『覇龍=破龍』は沖縄に滞在した。しかし、覇龍達は桜の木を見る事が出来なかった。代わりに見る事が出来たのは、ヤシの木だけでだった。
「大丈夫だって、ちゃんと約束しただろ?」
そういって神谷は小指を動かす。
「そうじゃない。だから無駄な心配なんてしなくて良いのよ」
神谷に続くよう絶破が言葉を出す。
「………はい!」
円満の笑みで覇月は答えた。
自由時間の終わりを告げる鐘が艦内に響く。これから訓練の時間だ。神谷は嫌そうな顔をする。それは覇月、絶破が呆れるほど嫌味がでた顔だ。神谷が思うに『覇龍=破龍』の戦闘員から司令官まで全員が相当な練度を持っていると思う。毎日の模擬戦闘では沈められる判定は出される事が無いし、逆に沈める艦は『覇龍=破龍』がほとんどだ。確かに体を鈍らせない為に動かす事は大切なのだが、偶には休みがあっても良いじゃないかと思う時がある。
「っても俺達は制御盤の前に座ってるのが殆どだろ?」
さっきまで愚痴っていた相手、水野が笑いながら背中を叩く。相変わらず容赦が無く痛い。確かにそうなのだが、ハッキリ言って暇なのである。それに毎日こう背中を叩かれては自分の体が保つ訳が無い。
「暇なんだよ…」
神谷の答に水野笑いの音声は量と共に増えた。ヒィヒィと腹を押さえながら悶えている。
一体何が笑いのツボに嵌ったんだ!?というかこいつ笑い上戸だったのかよ!?
意外な水野性格を知った神谷だった。しかし、今までそれに気付けなかった自分が悔しく感じたのであった。
作者とキャラによる~~ あとがき☆コーナー!!
~覇龍、55口径3連装砲塔の上より~
覇龍「投稿遅いですよ作者さん」
作者「本当にゴメン。受験勉強が忙しくって」
絶破「とか言って、動画を見ながら歌っていたのは誰だっけ?」
作者「ギクッ」
覇月「作者さん………あははは」
作者「ちょっ、笑顔が怖いよ覇月……」
絶破「ちょっと、覇月?大丈夫?」
覇月「大……丈……夫…で……す…よ……」
作者「ひぃぃぃいぃ」
絶破「これは止めようがないわ……」
覇月「さ~く~しゃ~さ~ん」
作者「ひぃぃぇぇえ!」
絶破「はぁ……あ、大切な報告があるらしいから活動報告を見て頂戴ね。それじゃあ、また次話で会いましょう?」