野生児がいろいろ機能を試して
メールもチャットも両方試した。
メールはメッセージカードを送る、というほうが近い。文字数制限が140文字だった。
チャットは誰が何を発言した、というのが順に上から表示されるというもので、たった二人ではあまり活用できそうになかった。
3つの機能を全て試したが、ここでペンタゴンオンラインにあったはずの機能を思い出した。
「今思ったけどさ、グループとかファミリーとかって組めないのか?フレンド登録って無いのか?」
グループは少人数でのまとまりで、確かそのメンバーでモンスターを倒すと、人数で経験値が割られて、一人が得る経験値は減るが、人数によって変わるが追加で経験値が得られるため、全体で得る経験値は増える、というシステムだ。
具体的な例で言うと、経験値3000のでかいモンスターがいて、それをグループを組んだ3人で倒せば一人の経験値は1050、全体の経験値は3150だ。逆に他人同士3人なら全員1000。
たった50と侮ってはいけない、積み重なれば他人と大きくレベルで差がつく。
ファミリーはグループと似たようなものだが、少し違う。
グループもファミリーも最初のメンバーを誘った人がリーダーになるのは同じだが、グループはリーダーしか新しいメンバーを誘えない。ファミリーは、自分の下に二人、自分よりレベルの低いプレイヤー、ジュニアを加入させられる。この二人のジュニアはまたそれぞれ二人ジュニアを加入……というように、メンバーが増えていく。
グループやファミリーの上位ではないが、ギルドという大人数のまとまりもある。
フレンド登録は記録として誰が友達か残せるし、友達に直接会話やチャットなどをつなげられる。要するに名前の入力が要らない。略称、フレ録、友録。
以上、ペタゴのやりすぎの兄情報。
「探したとき、見つからなかったのか?」
「でも、ペタゴの世界なんだからあるはずだよな」
既に完璧に順応しているイリヤス。
二人してウォッチの中を探す。
あっさり見つかった。
「あったし。『コミュニティー』欄に『グループ』も『ファミリー』も両方ある」
「あっれぇ、さっき俺が見たときは見つからなかったけど。」
イリヤスの言い訳。
目が泳いでいる。
「本当に端から端まで探したのか?」
「うう、いろいろ見落としてたかもしんない……」
「まあ、これで見つかったわけだし、どうする?グループかファミリーか組んでみる?」
「そうだな、これからしばらくしたら、一緒に狩りしようぜ。そのときのために、組んどこう。グループでもファミリーでもどっちでも俺は……って、ファミリーは組めないか。二人ともレベル1だし」
「あ、俺レベル2。ファミリーでいいか、グループよりいいこと多いし」
「それでいいが、どうしてレベル2なんだ? 俺、モンスターを倒すどころか、一体も遭遇してないんだが」
説明。
「へえ、森の中で起きたのか。俺はこの町の入り口で倒れてたな」
「町って、ここしかないのか?ほかにも町があるんだろ?」
「ないわけがないと思うけどな。ていうか、雑貨屋にマップ売ってあったろ。見たか?」
「雑貨屋は行ったけど……マップは見てないな。商品ざっと見ただけだったし」
「そうか。ローカルマップは500ペタ、ワールドマップは1000ペタだった。一文無しの俺にはどっちも買えないが、ウサギ一匹じゃあ何も買えない、お前だって変わらん。まあ、刀とか服とか売ればある程度の金にはなるだろうけども」
「……? 刀?そんなもんどこで拾った?」
「拾ってないって。初心者用のが、最初からアイテムのところにあるから、みてみ」
いわれたとおりにアイテムの欄を開く。確かに『刀』が入っていた。
「お前もうっかりしてるな」
「それだけは言われたくないね」
「…………」
「…………」
「……プッ」
「……ククッ」
二人が同時に笑う。
こういうのは、あれだ、あのことわざ。五十歩百歩。
「まあ、俺に殺生は性に合わん。狩りも、ゲームならともかく、こんな、完全リアルなところでできそうにない。だから刀なんて武器武器したものは使えん」
「武器武器って……最初からそういうこというなって。やってみなきゃわからないって言うだろ。装備しとけよ」
「まあ、どうしても必要なときになったら」
「消極的だな…………。そんなこといって、HPゼロになるなよ?初心者のときはいいが、」
「職業に就いたら経験値が減る、だろ?わかってるさ」
HPゼロ、要するに死んだら一番近くの町に生き返るが、それまでためた経験値が減る。(レベルが下がることはない)しかし初心者のときに限っては経験値は減らないのだ。
今は俺は初心者だが、別に自殺願望はない。
「わかってるならいいが、ペタゴは協力と狩りとクエストありきのゲームだからな。忘れるなよ」
ご高説ごもっとも。
でも言葉だけじゃ越えられない感覚的な壁もあるんだよ。
「じゃ、俺は行くぞ」
「は?行くって?」
「ほかの街に行く。この町は小さいし、だからか人がいない。もっと他の人に会うために、俺はほかの街へ行くんだ」
「マップは」
「マップなしでも看板を見て他の街ぐらいなら余裕で行ける。途中で適当に狩って新しい装備を買う金を作る」
そうか。残念だが、本人がそう決めているなら仕方ない。
「なら俺はこの周辺で狩って、ある程度装備を固めてから他へ行くことにする」
「おっと、ファミリー組むの忘れてたな。ヒデカズ、俺にジュニア申請してくれ」
ウォッチを操作、『コミュニティー』から『ファミリー』、『ジュニア申請』。
ヒデカズにジュニア申請を送信した。
「そしてYES、と。よし、これでファミリーだ。マップに表示されるぞ」
「ファミリーの誰がいつどこにいるかわかるんだな。すぐ会えそうな気がする」
「居場所がわかれば会ってるのと変わらないさ」
そんな意味不明なことを言う。
「んじゃ、行く。じゃあな、レベル上げてまた会おうぜ」
「ああ、またな」
街の出口へ、走っていくイリヤス。
この街でいろいろあったけど、それでも俺は心の底からこの世界がペタゴだと信じ切れていない。
諦めが悪い、というのか。
だからなのか、今の俺の感情は、迷子になったときと同じような、軽く途方にくれた感じなのだった。
書いてる途中でF5押して内容消えたああああああ俺の阿呆おおおおお
あ、設定ごちゃごちゃとしてますごめんなさい。
レベル上がったのはファミリーの伏線ではなく、偶然です。