野生児が人(プレイヤー)に会って
周りにいた他の人は全員、NPCだった。全員、返事がワンパターン。
とりあえず、店には少しぐらい人がいてもいいんじゃないかと思い、雑貨屋へ移動。
結論。
誰もいなかった。しかも客の相手をする人もNPC。
「こんにちは」
「いらっしゃい!薬は買ったかい、冒険には絶対必要だろう?」
そう言って板のようなものを渡された。
ほう、これはまた。
片面全部がタッチパネル、スクロールすれば品物と値段が次から次へと表示される。
タッチすれば説明が、ダブルタッチすれば『所持金が足りません』というウィンドウ。所詮は所持金5P。
もっとペタがあれば、『購入しますか?』とか出てくるんだろう。
ちなみに品物は『赤い薬50P』『橙色の薬150P』『青い薬200P』とかだった。
「人が集まるようなところってあります?」
「いらっしゃい!薬は買ったかい、冒険には絶対必要だろう?」
「いえ、買ってませんけど。金ないんで」
「いらっしゃい!薬は買ったかい、冒険には絶対必要だろう?」
「……ぎゃーてーぎゃーてーぼーじーそわかー」
「いらっしゃい!薬は買ったかい、冒険には絶対必要だろう?」
むなしい!
◇◆◇◆◇◆◇
こんな感じに、やっぱりNPCでした。
うーん、ここらで本物の人間の体温がほしい。ちゃんとした会話がしたい。
そう思いながら店を出る。いや、出ようとした。
「うわっ!」
ドンッ
店の戸を一歩踏み出すと、声とともに、何かが横からぶつかってきた。倒れる俺。
「いてて……」
「あー、ぶつかっちった。まー、いーや、どうせNPCだし」
「……俺はNPCじゃ、ない!」
この発言は、ほとんど条件反射で口を突いて出てきた。
目の前の、誰だかわからない人が、驚いている。
俺も驚いてるよ。
「えーと、NPCじゃ、」
「ない!」
「1たす1は」
「2!」
「チョキに勝つのは」
「パー!」
なんだか叫んでしまった。しかし周りにいるのはすべてNPC。俺たち以外に、やっぱり人間はいないようだった。
「うわー、マジでニンゲン……」
「それ、なにげ失礼」
返答しながらも、やっぱり驚きだ。
でもこの人、驚きすぎ。
「あ、俺はイリヤス。よろしく」
初対面でしかも行きずりの関係でしかないのだが、なれなれしくはないか。
「俺はヒデカズ。片仮名で、ヒデカズ。えっと、イリヤスって、漢字は?」
「あ、やっぱり名前変更したんだ。俺も、片仮名でイリヤス」
イリヤスも、名前変更したらしい。
「ウォッチ、どこまで使ってる?」
「? どこまでって」
名前変更、ステータスは見た。
「あー、もっと機能あるんだけど。よし、教えてやろう」
笑顔で言うイリヤス。その笑顔は人恋しさが故なのだろう。
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