野生児が人(NPC)に会って
途中から待ち切れなくなって小走り、そして快走。結構走ったよ。
しばらくして見えてきた、建物。 家、門、家、火の見櫓? いろいろ見える。が、見たところ、街と言うより村のようだ。そんな規模。
道は、村の中へと入っていく。
もっと大きな街を想像していたので、落胆を隠しきれない。見る人もいないけど。
でも、しょうがない。ないものねだりはよそう。
とりあえず、誰かに声を掛けよう。
入口の門をくぐって入ってみると、まばらながらも人がいた。
とりあえず、人のよさそうなお姉さんがいるので声をかけてみる。
「あのー、すみません。こんにちは」
「こんにちは。良い天気ですね」
「あ、はい、そうですね。それで、あの…………」
しまった、どんな質問すればいいんだろう。ただ人に会えばいいというだけで、そこんとこ考えてなかった。
そこで、少し迷って考えたのがこんな質問。
「つまらない事を聞きますが、ここは地球ですよね?」
よし、これなら『は?』とか言われないだろう。『ここはペタゴの世界ですか?』とか聞いて、可哀想な人を見る目でもされたくない。
しかし、相手(?)はさらに上手だった。
「こんにちは。良い天気ですね」
? ??
「は?」
こっちが言っちゃったよ。
その後、
「ここは何県ですか?」
「こんにちは。良い天気ですね」
「何歳ですか?」
「こんにちは。良い天気ですね」
「あなたは馬鹿ですか?」
「こんにちは。良い天気ですね」
……というやり取りが続いた。
……ただの馬鹿としか思えない。
だが、可能性として思いついたのは、この人はNPCだということ。
NPC。ノンプレイヤーキャラクター。村人からラスボスまで、人間が操作しないキャラクターのことを全てそう呼ぶ。もしかしたらこのお姉さんはその一人なんじゃないか。という可能性。
NPCは最初から決まった台詞しか言わない。
試しで他の人にも声をかけてみたが、全員、同じ台詞しか言わなかった。
◇◆◇◆◇◆◇
なんだかなあ、と天を仰ぐ。
さっきから、モンスターにしろウォッチにしろここの人たちにしろ、間接的にしかこの世界に対する回答をもらえていない。
YESか、
NOか。
運営でもいい、他にこの世界に紛れ込んだ人がいるならその人でも良い、何でもいいから直接答えを知りたかった。YESかNOか、そんなことは二の次になっていた。
周りにNPCが何人もいながら、俺は孤独感を味わっていた。
感想、アドバイス、誤字脱字の指摘、歓迎。その数だけ筆者が腹筋します。