野生児が異世界だと気付いて
ペンタゴン・オンライン。略してペタゴ。
詳しい説明は省略して、MMORPG。たくさんの人がパソコンとインターネットを使ってリアルタイムで遊ぶオンラインゲーム。
カミエ兄が病的なまでにはまっていた。(でも学校とかはちゃんと行ってた)
俺やタツミやリンカもカミエ兄にやらされてやったことがある、おもしろかった。
でも、やったことがあるだけで、実質やってたのは一年ぐらいだし。ペタゴを語らせたら止まらないカミエ兄の話はいつも聞いてたけど。そのおかげで知識は豊富だけど。
つまり、そんな関係。
今現在俺がいるのがそのペタゴの世界だと思うのが、一番納得できる。
でも、ペタゴの世界(かどうかは一応まだ不明)に来てしまうほどの因縁があったとは思えない。
俺には今現在の全てが分からない。
だから誰かに聞こう、と思った。
てな訳で道とか探しながら森歩き中。
ウォッチ構いながら。
ディー○スぐらいの大きさだったらまだいいんだけど、と思うのはタッチパネル。腕時計ぐらいの大きさしかない。
小さいなあ、と思いながらタッチする。さっきからミスタッチが多い。
そのうち慣れる、と思うのはこの世界を受け入れてしまうかんじがして(そのうち、というあたりはこの世界にしばらくいることが前提だし)頭が受け付けなかった。
でも短時間の操作でもその分は慣れたようだ。
そして、いろいろ分かったこと。
レベルが上がって、今レベル2。
職業は初心者。
直接攻撃と素早さの値が高い。相対的な比べ方をしているので、他は低い。HP、MPは高い低いの判断ができなかった。でもHPはMPより高い。
そういえば命中率と回避率の欄がないな、と気づく。確かに命中率と回避率はゲームの中でしか必要のない数字だな。
アイテムはツノウサギの角、というアイテムが一つ。あのウサギ、ツノウサギっていったのか。まんまじゃん。
お金は5P、入っていた。ここでペタゴのゲーム内通貨はP、ペタという名前だったと思い出す。5ペタ、ツノウサギの落としたお金だ。
名前の欄。水前寺英和と漢字でフルネームが入っていた。なんで分かる、という疑問。でも無視した。なんだかそういう驚きの一つ一つが無駄に思えたから。
名前のところを見ていると「名前を変更しますか?≪注:名前の変更は一度しかできません≫」というメッセージが出てきた。少し悩んで、≪ヒデカズ≫と名前だけ片仮名で入力した。名前欄を見ると変更されていた。
装備欄を見ると、『異世界の服(上)』『異世界の服(下)」『異世界の靴』の三つが表示されていた。
ああ、じゃあやっぱりここはペタゴの世界なんだな、という思いがまた強くなってしまった。
◇◆◇◆◇◆◇
そんな風にウォッチをちまちまと操作しながら歩いていた俺だが、あるとき木のないところに出た。
広くもなく土が踏み固められて……道。やっと発見!
これでだれか人に会えると思って、思いこんで、とりあえず右に走った。この時左を選んでおけば、と後悔しても仕方ないこと。
人に会える、という喜びが体力を水増ししたのか、走った。そりゃもう全力疾走。
……途中で道の横に何か立ってるのを見たはずなんだが、その時の俺は気付かなかった。
走って走って走り抜けて、たどり着いたのは街や村などではなく、
目の前は崖だった。
土の壁が俺を通そうとしなかった。いや、何者も通そうとしないだろうけど。
野性児は木には登れても崖は登れましぇん。
一本道だったから反対の方向へ行けばいいと思い至ったのは、崖についてから5分はあとだっただろう。
気力を無くして逆へ歩く。すると、来た時には見なかった看板が立ててあった。
『←リリス 行き止まり→』
ちゃんと見ておけばよかったと、後悔した。
でも、今は見たわけで。
今度は逆の方向へさっきまでと同じように歩いている。
リリスって街の規模は分からないが、あると分かっただけで心は折れなかった。
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