野生児がチートな件……って
筆者の中二爆発編。ごめんなさい。書いてて非常に駄文であることを実感、同時にものすごく筆が乗ることも実感。
転職NPCの言ったことを要約すると、ある場所で特定のモンスターを狩る、そのモンスターからドロップするクエストアイテムを30個集める、持ってくる。こういうことだ。
そして、そのある場所はウォッチの指す方向へ行けば楽々辿り着ける。ウォッチというかナビだ。
てなわけで、かなり簡単に転職クエストが終わりそうだ。
◇◆◇◆◇◆◇
ウォッチの指し示す方向に進んで、街の外に出た。行き着いたのが、廃墟。
いや、廃墟っていうか、そうじゃなくて……あれだ、ゴーストタウン。建物はウエスタンじゃないけど。
土でできてる家だから、くずれている家が多い。
その中や、家々の間に……モンスターが見える。見た感じ、サソリ。ただ、本物を縦横比そのままで大きくしただけではなく、なんというか、全体的にちょっとかわいい感じ。
かわいいサソリとかどんな感じだよ、とか言わないで頂きたい、実際そうなんだから仕方ない。
そのサソリの首のところに(サソリの首?)赤いスカーフ。こいつらが『特定のモンスター』なのだろう。
サソリの針には気をつけるとして……
「よし、狩るか」
◇◆◇◆◇◆◇
戦ってみると、サソリは今までに戦ったモンスターより、ワンランク強いことがわかった。体力が多いようだし、二つのハサミをすばやく突き出すので、よけるのが難しい。でも、サソリなのに尻尾の針を使わずに、はさみばかり突き出す。それは戦う上で針も使われるよりは楽になるのだが……。……それで良いのか?サソリ。
指定された30匹を狩るのには、そう時間がかからないで終わりそうだが。
そう考えを締めくくり、最初は針対策で装備した初心者用の剣を力任せにサソリの頭につきたてる。そのサソリが光となって消えていった。
◇◆◇◆◇◆◇
「つーか俺、職業が魔法使いなのに、魔法使ってねーじゃん」
サソリを30匹倒してから町への帰路、ウォッチで『サソリの赤スカーフ』というクエストアイテムを確認してから気付いた。
倒せたから別に良いんだけど。これでは針を使わないサソリと五十歩百歩である。
ウォッチで『スキル』の欄を表示、(魔法とはスキルの内の攻撃スキルのこと)見るとSPというポイントが大量にたまっていた。
「そりゃ一度も振り分けずに二次転職のレベルになったらそうなるよな」
SPはAPと同じように振り分ければ良いらしいが、APと違って自動配分というのがなく、自分で大量にあるSP・スキルポイントを振り分ける。
全体を見てみると、だいたい攻撃のスキルと自分強化のスキルの二種類があるようで、それぞれ二つずつ。大き目の石をぶつけるスキルと、敵の足元に小さい沼を作って動きを止める&ダメージのスキル。レベルアップの時に増えるMPの最大値を追加でさらに増やすスキル、受けたダメージの少しをMPで肩代わりするスキル。少し悩んで、自分強化のスキルを二つとも最大にしてから、攻撃のスキルの石をぶつけるほうを最大に。ほんの少しあまったSPを最後にもう片方の攻撃スキルに。
これで全部振り分けた。
ところで、どうやってこれらのスキルが使えるのか。
自分強化の二つは常に発動しているスキルだから良いが、どうやったら攻撃スキルを発動できるんだろうか。疑問を解決すべくスキル欄を探し回った。
どうやら、杖を振る軌道を設定して、それで発動するようだ。とりあえず横に振る軌道を石を飛ばす魔法に設定。沼のほうは使う気がしないので設定しなかった。
ちょうど、目に付くところにイグアナモンスターを発見、剣を杖に持ち替え、横に振る。魔法が使えるということで、ちょっとかっこつけて振ってしまった。
そのせいではないだろうが、飛んでいった石はイグアナを直撃はしたものの、一撃で倒すには威力が足りないようで、イグアナはこっちに気付いて向かってきた。怒り心頭、突進で。
魔法への期待から、一撃で倒せることを信じて疑っていなかったので、反応が遅れた。突進をよけられず、直撃してしまう。
イグアナの頭が当たった腹に若干痛みを感じながら後ろに倒れ、手をつく。
それ自体は至極自然な反応だったし、条件反射で当たりまえにしてしまったことではあるのだが。しかし後々そのことについて考えてみると、全く後悔がないといえば嘘になる。
何が言いたいかというと。
手を突いた直後、鍾乳洞のような鋭い円錐形に地面が盛り上がり、それにイグアナが突き上げられて刺さった。
イグアナの背中から先端が突き出ているが血は出ていない。後でペンタゴンオンラインは全年齢向けゲームだから血が出なかったのだろうと仮説を考えた。いや、その光景自体が結構グロテスクなので血が云々じゃあないだろうけど。
後のことは置いといて、このときは状況に頭がついていかず、呆然として視線を緑色のイグアナに固定していた。その視線の先で、イグアナが光となって消えた。
いきなりのことにびっくりだが、思い当たる言葉が口をついて出る。
「チート……ってやつか」
信じられないので、もう一回地面をたたいてみる。
もう一回、土が鍾乳洞的な形に盛り上がった。手を離すと消える。
ポーン、と電子音が聞こえた。ウォッチを見ると、
『称号獲得『生える土棘』』
の文字。
称号、それはキャラクター名とは別の、二つ名。
どのキャラクターも持てるものではなく、また、運営が授与することと、プレイヤーから申請することのどちらかから得ることができる。
この場合、前者か。
『土棘』は、つちとげ……だと何か変だ、どきょく、と読むんだろう。(それでも変だけど)
また、ポーン、と電子音。今度は何だ。
『特殊ステータス開放『野生児』』
野生児?確かに自他共に認める野生児ではあるけど……とりあえずステータスを見る。
『特殊ステータス『野生児』
獲得経験値二倍
消費MP1.25倍
称号 野生児』
とのこと。
獲得経験値二倍。
獲得経験値二倍。
驚きすぎて二回繰り返してしまった。
いや、ある意味すごく納得がいったけど。だから同じ量モンスターを倒してもイリヤスとあんなにレベルの差がついたのか。
消費MPのほうは、まあ、経験値のペナルティだと思えばいい。天秤にかけても経験値二倍のほうがずっと重い、全くつりあっていない。
悪いことではないから素直に喜んでおこう。
ふと気になってスキル欄を見る。あった、さっきまでなかった『土棘』が、4つのスキルと同じところに並んでいる。
スキルレベルは1、だがMAXレベルは1、と書いてある。消費MP0と書いてある。ただでこんな良いスキルが使えるのかよ。
『土棘』の説明は、『手を地面に置くと土棘を生やすことができる』だけ。あ、だから称号『生える』土棘なのか。
攻撃系スキルは説明プラス消費MPいくつ、とか攻撃力いくつ、とか次スキルレベルの攻撃力、とか詳しく書いてあるが、この土棘というものにはそれらがない。消費MPはあるけど。
なんだか夢のような待遇だ、狐にでもだまされているんじゃないかと疑ってしまう。
運営AIに質問してみた。
質問
Q:チートですか?
回答
A:チートです。
……おい。
感想アドバイスなどいただけると嬉しいです。