野生児が一次転職をして
狩りを終え、カンタータに戻る。
あの砂の多い場所で一日中狩りをしていたのだがのどが痛くなったり、そんなことが全く無いのはやっぱりゲームだな、と思う。
イリヤスはペタがたまったから宿に止まってみたいと言い、俺は別で寝ることにした。
実は俺は宿というものに泊ったことが無い。あ、ホテルは小学の修学旅行があったか。でもそれ以外ない。
というわけでなんだか遠慮してしまって、今日は民家の屋根の上で寝ることにした。
土の街というだけあって土でできた家なのだが、日中、日差しが強く、夜でもその熱が土の家に残る。その熱で少し温まって寝られれば、と思って、そこを選んだ。
その屋根の上で寝ころがる。
星がきれいだ。うちの里山と同じぐらいきれいだな。
だが、そこはやっぱりゲームの世界、星座なんてものは無くただ無秩序に星が夜空に張り付いている。
ふと気付いたのだが、俺はこの世界に来てから一度も食べ物を口にしていない。腹も減っていない。これはどうしたことか。
自称ペンタゴン・オンライン運営AIがウォッチから質問しろといっていたのを思い出して、質問してみる。
Q:この世界に来てから何も食べていないが空腹を感じない。これはなぜか。食べなくても身体的に問題は無いのか。
できるだけ簡潔に質問文を書いて送信したらすぐに返信が来た。驚きの早さだ、流石AI、コンピュータ。
A:空腹を感じないのはペンタゴン・オンラインに『プレイヤーは食べ物を食べるものである』という設定が無いからです。同じ理由によって、身体的に問題はありません。
なるほど。確かにペンタゴン・オンラインというゲームはものを食べることができる、という情報など聞いたことが無い。(つまりアイテムと食べ物は別のものなのだろう)どこまでもペンタゴン・オンラインオンラインというわけか。
今はこの世界に不自由していないが、そのうちとてつもなく戻りたくなるときがあるかもしれない。そうなったときに、俺はどうすれば良いのだろうか。
ていうか、戻れるのかよ。
◇◆◇◆◇◆◇
起床。空腹具合を確かめるが、全く腹が減っていない。ある意味便利ではあるが、何か口に入れたくなる。
屋根から下りる前に太陽を見る。この街は砂漠の端にある、という設定だが、その砂漠の地平線から太陽が昇ってきているところだった。
柔軟運動をしてから街に下りる、道端にはプレイヤーらしき人影は無く、NPCしかいない。
昨日一日で経験値もペタ(お金)もずいぶん溜まった、これなら何かの装備を買えるのではと防具屋へ出向いたが、レベルとお金が足りていても初心者では使えない装備ばかりだった。
仕方なくあきらめて店を出る。と、『土魔法使い転職所』という看板が目に入った。
◇◆◇◆◇◆◇
「魔法使いってその場で魔法ばかり使ってそうだけど、実は結構ハードな職業なんだよ」
受付NPCのお兄さんに声をかける。NPCさんの言葉をスルーして、説明を受けるために質問する。
「どうやったらなれますか?」
「初心者の一次転職に条件は無いよ。今すぐにでも土属性魔法使いにしてあげられるけど、どうする?」
どうするもこうするも、特になりたい職業が無いんだから、今すぐなれるといわれて断るわけが無い。実質、何でも良い。
「お願いします」
というわけで、土属性魔法使いになった。
◇◆◇◆◇◆◇
魔法使い最初の武器、杖をもらった。剣などは攻撃力がプラスされるが、これは魔力がプラスされるらしい。
これで魔法使い系の装備が着けられる。
あと、APの再分配をしようと思ったが、案の定自動分配で既に分配されていた。楽だ。
ピコーン、と電子音。そうだ、昨日イリヤスがクエストを受けられる状態になると電子音が鳴るアラームをONにしていたので俺もしたんだった。
今のクエストは……目の前のNPCか。
「クエストですか?」
「よく二次転職が受けられるようになるまでに成長しましたね。苦労も多かったことでしょう。さ、二次転職のために奥へ入って土の大魔法使い様に会ってください」
「? はい」
よく分からない。一次転職をしてすぐに二次転職って……。二次転職の条件って、確か、レベ……
あ。
分かった、分かってしまった。
二次転職の条件はレベル30、(兄情報)そして俺は既にレベル30を越えている。だからこうなったのだろう。
うん、ぱっとこの二次転職のクエスト終わらせよう。
短いです。
というか一話1000字投稿が基本のつもりだったのに……どうしてこうなった
3000にしたいが、そんな量書くと次々投稿できない……
杖は指揮棒みたいな大きさです。杖というか棒だな。