野生児が狩りをして
「あ、いた。イリヤス!」
「あ、ヒデカズ」
イリヤスと合流。イリヤスは砂の多い地帯で狩っていたようだ。
地面は砂だが、その辺に草が、たまに木も生えている。
「聞いて驚くなよ、昨日と今日の狩りでレベルが10になったんだぜ。最初のうちが上がりやすいっていっても、結構あがったと思わないか?」
最初がレベル1だから、9上がったわけだ。かなり上がったほうだろう。
「お前はどうなんだ?」
「いや、あまりレベルとか気にしてないけど」
「そうじゃなくて、ファミリーとか、いろいろレベルって大事だから、見ておけよ。で、いくつなんだ?」
ウォッチを見て自分のレベルを確認。
「あー……俺、レベル18」
「……まじで?」
「……まじで」
「まじかよ!俺結構がんばったのに!つか、経験値で言ったらお前俺のに倍以上とってねえ!?ちょ、お前どんなチート使った!?」
切れるイリヤス。俺に向けて切れてるわけじゃないのは救いか?
「いや、何もしてないし。前の町のウサギと、ここに来るまでに何匹か」
「そんだけか?」
「あ、クエストもあった」
あー、それ忘れてた。
そういって天を仰ぐイリヤス。
「クエストかー。どうやって受けるのか分からんけど、今後やってみよう」
「NPCに話しかけたら偶然クエストがはじまるNPCで。そのクエストからどんどん次のクエストにつながって。経験値だけじゃなくアイテムももらえたぞ」
アイテムは実際に持ったりできないので、ウォッチで『傷薬』を表示してイリヤスに見せる。
「へー。何とか色の薬は店に売ってあるけど、傷薬ってのははじめてみたな。50個も持ってんじゃん、ちょっとくれよ」
たくさんあるからあげるのは別に良いが、あげ方が分からない。
「『交換』で名前を入力、そんで相手が応じたらアイテムを『交換』のところに載せる、了承したら交換完了」
「なるほど。お前は何でも知ってるな」
「何でもは知らねえよ。知ってることだけしか知らん……おい、早く傷薬くれ」
『交換』でイリヤスがいったとおりにしているのだが、『傷薬』が交換テーブルに載らない。
「待てって……あ、」
「どした?」
ウォッチをイリヤスに示す。
「ここ。交換不可って書いてある」
「あ。本当だ」
アイテム『傷薬』のした、はっきりと『交換不可』って書いてあった。
「じゃあ、あげれんじゃん」
「だな。あきらめることにする。でさ、お前APどんな風に振ってる?」
ん?AP?なんじゃそら。
そういえばそんなのあったな、と記憶に無いわけじゃないのだが、如何せんその程度。えと、レベルが上がったときにもらえる数値?だったか。
「いや、AP振ってないのか?APの分配しないと、レベル上がっても全く強くならないんだぜ?」
「え、マジで?なら俺、一回も、それ、APの分配なんてやってないぜ?お前がちゃんとやってんなら、俺レベルはお前より高いのに実際はお前のが強いの?」
それはかなりショックである。
あれ、でもレベルが上がってツノウサギがかなり倒しやすくなったんだが……
イリヤスはウォッチのステータス確認の画面でAP分配がされるという。その画面を開いてみた。
「「……」」
なんと、俺のAPは一つも残らず分配されていた。
何の理由も無く自動的に分配されるわけが無い、どうしてかを探す。
あった、『自動分配』の□(しかく)にチェックがされていた。
どうしてかは分からないが、俺のAPは自動分配になっていたらしい。
「もしかしたら、お前がレベルが上がってもAP分配しないから、自動的に自動分配になったのかも知れん」
推測だがな、と付け足してイリヤスが言う。
「因みに俺は攻撃力に反映するSTRに極振りしてる。一種類だけに限定して分配することだ。限定したら分配とはよばねえけど。APはSTR、DEX、INT、LUKの四つがある。装備品は実力にあったプレイヤーにしか装備されないように、制限がかかっているのがあるが、レベルのほかにもこの4つの数値で制限がかかっているのもある。STRは戦士、DEXは弓使い、INTは魔法使い、LUKは盗賊系の装備に関係する。だが、STRに極振りしてるからって戦士にしかなれないわけじゃない、転職するとそれまでにためたAPが全て分配前に戻る。だから、俺が魔法使い系の職業につこうとしたらSTRの値はINTに振ることができて、その職業に合った分配ができる」
一気に言い切った。俺に向けて説明してくれたけど、俺ある程度わかってるんだが。
「で、ヒデカズはどの職業に就こうと思ってるんだ?」
「いや、まだ考えてない」
この言葉、高校進学を考える先輩がよく言ってたなー。
「実際、ホント何でも良い」
「は、いまどきの若者ってか。俺はストライカーになるぜ。そんですぐにお前のレベルを越す」
「意気込みは結構だが、ファミリーで親より子のレベルのほうが高くなったらどうなるんだ?」
「さあな。入れ替わるかもよ?」
「しゃれにならん」
何であれ、俺はある種の優位性を保っていたいのだ。
◇◆◇◆◇◆
その後、一日中日が暮れるまで、イリヤスと二人で狩りをした。ファミリーを組んでいる同士が近くで狩りをすると名声度という値が互いに高まり、その値を使って獲得経験値2倍、ドロップ率2倍などの効果を使うことができるからだ。実際にその効果を使って、狩りが終わるころにはかなりの経験値がたまっていた。
「よっしゃ、レベル27!めっちゃ上がったな!お前はレベルいくつになった?」
「33」
「……絶対お前なんかチートだろ」
チートの自覚など全く無いのだが。ただ、モンスターと戦うときの立ち回りは、俺のほうがイリヤスより上手だと客観的に思う。
しかし、その程度でこんな差がつくものなのだろうか。
かなりの疑問点だ。
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