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―第52話― 計画的無差別殺人

「計画的……無差別殺人?」

 

 風間刑事が復唱する。周りのみんなも黙り込んだまま顔を見合わせていた。

「そうです」風間刑事の問いかけに対し、コトハは平然と答えた。

「しかし、誰かに背後から突き飛ばされたなんて情報は何一つ入っていないんだよ?」

「当然です。なぜなら犯人は一度も被害者に触れることなく犯行を繰り返していたのですから」

『被害者に触れることなく?』

 周りの警察関係者がざわめきはじめた。はたしてそんなことが可能なのだろうか。普通に聞いていれば信じがたい話だが、それを言っているのが他ならぬコトハだということが、オレを納得させたる十分な理由になりえた。


「なんだねそれは。……まさか超能力とでも言うんじゃないだろうね?」

 警察の一人がコトハをあしらうように問い返した。

「そうですね。近いかもしれません」

『認めるのかよ』

 コトハはそのまま話を続ける。

「この事件は、人の持つ『三つの無意識』を利用した犯行なんです」

「三つの無意識?」風間刑事が再び復唱する。

「ええ。ここからは皆さんにもわかるように説明していきましょう」


******



「ではまず、この事件の犯行がどのように行われていたのかを説明します」


 その場にいたメンバーが親父とコトハを取り囲むように集まった。状況だけ見ればオレもコトハサイドに立つ側の一員に見えるのかもしれないが、事の真相を知らないのは事実、今日は聞き手にまわらなければならない。一緒に捜査をしようと言い出したのはアイツなのになんというか……

 

 これはいじわるか?


 コトハは親父と顔を見合わせるとコクリとうなずいた。同時に二人は白い手袋を付け、しゃがみ込んでは足元に置いてあるジュラルミンケースを開け始める。


「皆さんはこれが何かわかりますか?」


 そう言ってコトハの手に掲げられたのは透明な袋に入った一台の携帯電話だった。

「携帯電話?」

「そう。被害者の遺留品の一つです。これを見て何か気づきませんか?」

 コトハはそう言うと皆によく見えるようにそれを回し始めた。遺留品の携帯電話は一周し、オレの手を介してコトハへと返される。

「どうでしたか?」


 携帯電話を見た時の第一印象。それは誰もがこう思っただろう。

「……傷が目立ちますね」

 オレの考えを先に言ったのは菊袖リナだった。

「そう。他の被害者の方にも共通して言えたことです。つまり、この事件は傷だらけの携帯電話を持つ人間だけを狙っ犯行? いいえ違います。事故にあった結果、携帯電話が傷だらけになったと考えるのが自然です」

 風間刑事は腕を組んでは無言のまま相槌をうっていた。コトハはなおも解説を続ける。

「ではどのような状況にあれば、ここまで傷がつくのか……」

「つまりは事件当時、被害者はみんな携帯電話を使用中だったと……」

 コトハの問いかけに対し海堂が反応を示した。

「御名答。携帯電話をポケットや鞄にしまっていればここまで傷はつきません。そしてこの時間、通話履歴がないことから電話ではなく『画面』を見ていたことがわかります」


静まり返る空間。果たして彼女の言葉がどのような意味を持つのか理解できている人間がどれほどいるのだろうか……。いや、海堂ならあるいは。

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