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―第51話― コトハの推理

******



「いいですか? ノボルおじさん。これから私の考えるこの事件の真相について推理します……」



 ――日は移り変わり今日。



 コトハと親父の電話のやり取りを聞いたのは昨晩のことになる。日も沈みかけ、辺りも暗くなりはじめた頃。

 コトハは事故現場からの帰り道、駅のホームで親父へと電話をしていた。

「……ええ。それで次の事柄が全て該当したその時は、できるだけ早急に皆さんへ招集をかけてほしいんです」



 そして今、オレたちはその事故現場へと集められている。



「すみません、ノボルおじさん。無理させちゃって」

「いいさ、この事件の真相を暴けるのなら、徹夜なんてどうということはない」

 親父はコトハに言われたことを調査すべく、昨晩は帰っていない。

「そんな日もこれが最後です。私とノボルおじさんで暴き出したこの事件の真相を今こそ……」

『あれ、オレは?』

 コトハと親父は道のかたわらで話をしている。その周囲ではこの事故、もといこの事件の担当をしている警察関係者が集まりはじめていた。


「姫ヶ谷さん、これはいったい……」


 ため息混じりにそう言って現れたのは海堂シンだった。その後に続くようにして車椅子に乗った大炭エラと、それを押す菊袖リナ。その横に立っているのはエラさんのお母さんだろうか。彼女たちをここまで誘導して来たのは風間刑事だった。

「学尾さん、手筈通りに」

 風間刑事は親父にそう伝えた。親父は黙って頷く。と、ここで初めて風間刑事と目があった。オレは軽く会釈する。風間刑事は会釈と同時に首をかしげる仕草をみせた。

「あれ? どうして君たちがここに?」

 その言葉に対し、今度は親父が反応を示した。

「ん? 風間、ウチのシゲルと知り合いなのか?」

「ウチのってまさか学尾さんとこの息子さんですか!?」

 親父と風間刑事はお互いに驚いた表情をしていた。まぁ、風間刑事とは前にここに来た時に話したのが初めてのことだがな。


 その一方では、コトハは海堂と対話していた。

「久しぶりね、海堂くん」

「姫ヶ谷さん……この事件には関わらないと」

「ええ、それも今日で最後。以降この件には関わらないと約束するわ」

 海堂は困り果てた様子で頭を抱えている。

 オレ自身、コトハがこの事件の謎を解いたということを疑っているわけではないが、その真相を教えてもらってない以上、不安を隠せないでいた。それに海堂のこの態度は……。

「ということは姫ヶ谷さん、この不可解な『現象』の謎が解けたと?」

 海堂がコトハに問う。

「現象? 何を言ってるの海堂くん。これは事件、『殺人』でしょ?」

 

 コトハのその一言に一同が静まりかえった。

 『殺人』。それはかつて、コトハがそうかもしれないと口にしたことがあった。もし本当にそうだとしたら、いったいどうやって。そして誰が――。 



 やがて海堂が沈黙をやぶった。

「ふふっ……『殺人』ですか、面白い。では聞かせてもらいましょうか。姫ヶ谷さん、あなたの推理を」

 コトハは俯いたまま目をつむり、口を閉ざしている。周りにいる誰もが息を呑んだ。


 そしてコトハは返答する。

「――いいでしょう、結論から言います。この横断歩道で起きた度重なる事故。これはある人物により仕組まれた『計画的無差別殺人』です」

 

 その瞬間、昨晩の彼女の口元、その動きを思い出した。踏切警報機と電車の騒音でかき消された彼女の言葉。それはきっと、このフレーズに違いない。

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