―第48話― 大炭エラ
オレはコトハの手帳をもとに親父からの情報を確認する。
コトハが親父に調べてもらった被害者の共通点。その一つは渡ろうとした方向、そして狙われた者のほとんどが傷だらけの携帯電話を持っていたということ。これらの事柄が、いったい心霊歩道の条件を満たす何になるというのだろうか。
オレたちが再び新聞を調べだして間もなく、事件当時の記事を見つけることができた。コトハはその記事に目を通す。
「あった。笹枝市西区で交通事故。一人死亡……もう一人が意識不明の重体?」
「何だって!?」
オレは机の上に身を乗り出して記事の文面に自らの目で確認した。
死亡したのは大炭ヨウヘイくん6歳。これは親父からの情報と違いは無い。しかし問題なのはこの事故の被害者がもう一人いたということだ。二人目の被害者は大炭エラさん16歳。どうやらヨウヘイくんの姉のようだが。
「……被害者は二人いた!?」コトハが頭を抱えた。
「これが本当に0番目の被害者なのかよ?」
「青い靴の少年、噂の元凶はこのヨウヘイくんのことだと思ったんだけど、被害者が二人いるとなると……」
彼女はそう言って、親父との電話でメモに使ったボールペンを下唇に押し当てる。しばらく考えるようにしてオレに視線を移した。
「……わからない。例外は偶然だったの?」
彼女の方程式をもってしてもこの事件の答えを出せないとは。あの天才高校生探偵が不可解と言うわけだ。しかしこの事件、二人が解決できないとなると本当に迷宮入りしてしまうだろう。
コトハはしばらく考えるようにして再び口を開いた。
「でも、これで次に行くべき所がはっきりしたわ」
「次に行くべきところ?」
「エラさんの意識が未だ戻ってないとしたら彼女は今もこの場所にいるはず」
コトハはそう言いながら机の上に地図を広げる。
オレたちは口を揃えてこう言った。
「西区総合病院」
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オレとコトハはその足で総合病院へと向かった。幸いオレたちのいた市立図書館からはさほど離れてはおらず、それどころか事件現場からは目と鼻の先にあった。あの場所で事故にあえば十中八九この病院へと運ばれるだろうというわけだ。
今現在、極めて健康体なオレたちにとっては無縁の場所だったが、まさかこんな形でこの場を訪れるとは思ってもみなかった。
しかしながら立派な病院だ。オレとコトハは二人、病院の門前でたたずんでいた。
「でもコトハ、意識不明って面会とか大丈夫なのか?」
「エラさんがこの病院へと運ばれた時のことを当時の関係者に聞けたらそれだけでも何かわかるかもしれないし。エラさんの保護者が来ていればいいんだけど」
オレは歩みだすコトハの後に続くように二重に構成された自動扉をくぐった。さて、日頃行きなれた場所ではないためか、やけに違和感を感じる。扉を開いてすぐに受付でナースが待機していた。
病院のナースと聞けば美人と相場が決まったものだが、なるほどやっぱりそうらしい。受付嬢をやるということはこの院内でも指折りの美人なのだろう。年の頃25といったところだろうか、知識ある落ち着いた大人の魅力を感じさせている。
「あの……」