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―第44話― 忠告

「――では早速ですが本題に入りましょうか」

 海堂はコーヒーカップを片手に話し始めた。

「今回のこの一件について、あなたたちはどこまでご存知ですか?」

 コトハは海堂の問いに答える。

「……何も。警察が現れたことと風間刑事の話で、あの場所が噂に聞く心霊歩道だってわかったことくらいよ」

「やっぱりそうだったのか!?」オレは沈黙を破り驚いてみせた。

「なによ学尾くん、いきなり」

 そんなオレにコトハは驚いてみせる。海堂は両手を組むと語り始めた。

「姫ヶ谷さんも人が悪い。風間刑事の聞き込みから逆に情報を得ようなんて」

「あら、聞いていたの?」

「途中からですが。僕の推理では、あなたたちはあの場所が心霊歩道だという確信を持てなかった。だから姫ヶ谷さんは『心霊歩道』というワードを一言も使うことなく、風間刑事に話をした。しかも『赤い靴』という誤報を織り交ぜてね。それに違和感を覚えた風間刑事はメモ帳の履歴をさかのぼる。そこには『青い靴の少年』というワードと、そして『心霊歩道』というワードがあったのでしょう。今と過去の聞き込みの記憶を撹乱させられた風間刑事は思わず心霊歩道というワードを使ってしまった」

「――御名答」

「それともう一つ。『少年』をあえて『美少年』とすることで、写真に収める理由を作る。普通何も知らない人が『赤い靴の美少年を写真に収める』とだけ聞いたなら、誰も心霊写真だとは思わないですからね」

「さすがね海堂くん。でも最終的により確信を持てたのは、あなたがあの場所に現れたからよ」

「いや、参ったな。……まさか僕のせいとは。こういった噂には野次馬が押し寄せるので、報道規制をかけていたんですが、それでも噂は広がるものですね」


 互いに冗談めかしたような口調だった。しかし傍から聞いてると、とても高校生同士の会話とは思えない内容だ。雰囲気がいい喫茶店だけに会話の内容にギャップを感じざるをえなかった。

「一つわからないのは、あの場に警察が張り込んでいたことをどうやって知りえたかです」

 海堂はコトハに問い返す。

「現場でパッシングする車が数台あったからよ。警察の『張り込み』を、『交通違反の取り締まり』と勘違いして対向車に教えたのでしょうけど」

「なるほど。それでネズミ捕り捕り、あるいは警察ホイホイを配置したと」

 コトハと海堂は同時にオレの方を見た。

『……こっち見んな』  

 

 やがて場の空気は一変する。海堂は俯いたまま、真顔でオレたちを凝視した。


「そこであなたたちに忠告しておきます。決してあの場所には近づかないようにしてください」

 オレとコトハは海堂の真剣な眼差しに息をのんだ。海堂はそのまま話を続ける。

「あの場所は本当にやばいです。僕はクラスメートのあなたたちまで失いたくはありません」

 海堂が言うと妙に信憑性を増して聞こえるのはオレだけか? 冗談ならやめてほしいが、冗談で言っているようには聞こえない。コトハも不思議そうに海堂を見つめていた。

「どうして? まさか海堂くん、あなたまで呪いだなんて言うんじゃ……」

「わかりません。ただ、この事件は不可解な点が多すぎる。あとは僕たちに任せてください」


 オレはコトハと顔を見合わせる。海堂はオレたちの表情から察したように安堵した――。


 その日の晩。

 オレたちはいつも通り家族4人で食卓を囲む。帰りの遅い親父を待っていたこともあり、昨晩より少し遅めの晩御飯となる。親父は帰って来るなり疲労の色を浮かべていた。

「あなた、お疲れ様」

 クレハが親父に声をかけた。

「すまないね、待たせてしまって」

「やっぱり、あの事件?」

「そうなんだ……あの事件の決着がつくまでは、もっと帰りが遅くなるかもしれない。その時は先に寝ていてもいいから」

 親父はネクタイを緩めながらクレハに言った。クレハは少し悲しそうな表情を見せる。そんな二人のやりとりを見て、オレとコトハも困惑していた。

 その場の空気をくみ取ったのか、親父は再度口を開く。

「でもまぁ、こんな事態も長くは続かないよ。今話題の高校生探偵も協力してくれるようだし」

 今話題の高校生探偵といったらきっとアイツのことに違いない。

「――海堂シン」

 コトハがサラリとつぶやいた。

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