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―第21話― 再会

「あなたは……A組の鷹崎さん?」

「そう、A組の鷹崎マリだよ。マリって呼んで」

 この子は二年A組の鷹崎マリ。校内では『ジャンケンの女王』として知られている。かつてコトハとはクラスマッチの競技を決める会議で、六クラス代表ジャンケンの決勝戦で対峙した相手だ。そんな鷹崎が今度はこちらに視線を向けてきた。

「あれ、君は……あ! あの時コトちゃんの横で、指をくわえて眺めていた冴えない男ね?」

 初対面ではないにしても、顔見知り程度でよくもここまで不躾な質問ができるもんだ。しかし『コトちゃん』とは、いつからそんなに仲良くなったのだろうか。鷹崎はコトハに視線を戻して尋ねた。

「にしても二人とも何やってるの?」

「何って、ババ抜きだけど……」

「二人でババ抜き? そんなのつまらないでしょ?」

「え、 そうなの?」。コトハは目を丸くすると、今度はこちらを窺った。

「うん、まぁ、普通は二人ではやらないかな」

「そうなんだ……。私、こんな感じでトランプしたこと無かったから」

「だったら……」

 鷹崎はオレ達が座る席の前列に座っている男子二人に話しかけると、やがてその席を譲ってもらった。座席を回転させ、向かい合う席を作ると、鷹崎は言う。

「私もまぜてよ」

 前に会ったときは気づかなかったが、この鷹崎マリも結構強引な性格のようだ。

「何て言って席を譲ってもらったんだよ?」

「ああ、それはね、ジャンケンで私が勝ったら席を譲ってって頼んだの」

 なんだかその時ばかりは、その男子二人が可哀想に思えた。

「でも、そんなノーリスク・ハイリターンな要求、受けてもらえたのか?」

「もちろん私にもリスクはあったわよ。私が負けた場合は、『修学旅行で一緒に回ったげる』って言ったの」

 まぁ確かに、賭けの代償としてはリスクの方が高いかもしれないが、お前はこの笹枝高校では『ジャンケンの女王』と呼ばれているんだぞ。言ってしまえば、コトハ以外には負け知らずだ。鷹崎は譲ってもらった席に落ち着くと、トランプを回収し、切り始めた。今度は三人でババ抜きか? オレの目の前には席が一つ空いていた。

「譲ってもらうならどちらか一人でもよかったかもな」

「確かに、あと一人は欲しいところね」

 鷹崎はトランプを切りながらその席に視線を落とす。コトハはオレと鷹崎の顔を代わる代わる見ていた。

「ちょっとそこのキミ!」。今度は鷹崎マリが、別のクラスの男子学生を一人連れて来た。オレはコトハの耳元で囁くように言う。

「なぁコトハ。鷹崎マリってこんなに強引な性格なのか?」

「さぁ。私も知らなかったけど」

 鷹崎マリの強引さに負けて、一人の男子学生がやってきた。細身で長身だが、目が細く、気弱そうな表情をしている。

「何でしょうか……」

「キミ、名前は?」

「塚原です。塚原コウ」

「塚原くん。これからババ抜きするんだけど、入ってもらえるかな?」。鷹崎は半ば強制的口調で塚原に言った。

「ええ、いいですよ。そういうことでしたら……。」

 塚原はオレの前の席に腰掛ける。これで四人揃った。カードが配られると、やがてババ抜きが始まる。しかし四人揃ったところで、オレにとっては本番までの時間潰しに変わりなかった。


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